研究課題
災害は直接的な被害だけでなく、人々の心身に大きな影響を与え、大きなストレスとなる。一方人々は、災害から生活を立て直しつつ、ストレスに対処してい くことが求められる。2021年度は、2020年度に引き続き、新型コロナウイルスの影響に向き合い、実施可能な研究を遂行した。実施できたことは、2020年度と同様に、2018年北海道胆振東部地震の直接の被災地にある高校及び近隣都市の専門学校での心身影響調査及びコロナ対策実施率やコロナ対策ストレス度調査であった。調査は、専門学校では2021年5月、被災高校が2021年9月に実施された。これらは、2020年同時期に得られた調査データとの比較データとなった。 これによると、「イライラ」「中途覚醒」は有意に減じている傾向が認められたが、「体調不良感」「不安感」で変化がなかった。コロナ対策に関しては、「消毒」「マスク」「換気」の実施率は高く、「社会的距離」「三密回避」「外出自粛」「移動制限」で実施率は高くないが、「外出自粛」「移動制限」のストレス度は2021年度では高くなったという傾向が示された。これにより、青年にとってコロナ感染症そのものだけでなく、感染症を防ぐための感染症対策が大きなストレスとなっている実態が明らかとなった。一方、本研究の研究協力者であるアメリカミシガン州オークランド大学の宅香菜子教授の招聘を行い、本研究データに基づいた研究交流、北海道の関連研究者との対面による研究交流を行った。また、日本精神衛生学会、日本集団精神療法学会、北海道教育学会において、すべてズームであったが、研究発表を実施した。
2: おおむね順調に進展している
理由申請時には想定していなかった世界的なコロナ禍にあって、申請時の当初計画とは研究計画は大幅な修正を余儀なくされたが、災害支援研究、という本研究の 大枠に沿った形で、コロナが若年者に与える影響とコロナ対策が与える影響についての実態調査を実施することができた。これにより、地震災害と、コロナ禍という異なった性質の災厄が人々に与える影響について、継時的に調査データを得ることで、比較検討するための資料を得て、現状を把握することで、感染症という災害に対する災害支援を考えることができている、という意味で概 ね順調に進展していると言える。 また、コロナ禍で困難と思われたアメリカの研究協力者との対面による研究交流を実施でき、データを突き合わせ、様々な角度から本研究の検討を行うことが出来たことは研究の進展にとって貴重な機会となった。ズームではあったが、学会発表もできたので、研究成果の公表という点でもコロナ禍で可能となったことは本研究の進展を示すことが出来た。
今後、2018年北海道胆振東部地震の被災地における被災高校に継続的に調査を行なって、その推移について、また、コロナとその感染症対策が与える影響について調査を行うことが第一の課題である。 そして現在コロナのために調査が進んでいない2000年有珠山噴火災害が20年後にもたらしている影響調査、及びポジティブな変化をもたらす要因について、病院職員を対象としたWeb調査の実施が現実的に可能な本研究課題である、と判断し、その方向で進めていく予定である。
コロナによって、本来業者を利用してアンケート調査の集計を行う予定であったが、大規模アンケートの実施が今年度もできなかったこと、そして、国内外の学会がほぼ全てリモートとなって学会関連旅費の使用がなかったことが、未使用額が発生した主な理由である。今年度は、国内だけでなく海外への渡航も可能となったので、国際学会へのonsiteでの参加も可能になる見込みなので、旅費が発生することと、調査が停止していたものを限局的に実施することで、集計等に人件費が発生するので使用することになることを計画している。
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室蘭工業大学紀要
巻: 71 ページ: 39-59