研究課題/領域番号 |
20K03433
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
住吉 チカ 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (20262347)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 意味記憶 / テキストマイニング / 語流暢性課題 |
研究実績の概要 |
【概要】本研究は、①語流暢性課題データから意味記憶の構造化を推定する評価法を確立する、②労働状態の予測に構造化指標を導入し、有効な場合予測を実践する、③目的①の成果に基づき、研究領域規準(RDoC)の認知系における解析単位を拡充する、ことを目的としている。2021年度は、①を中心に研究を行った。語流暢性課題データを用いて高次意味記憶構造化を推定し、テキストマイニング手法の一つである特異値分解法が有効であることを確認した。
【主な知見】経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation; tDCS)による治療を受けた統合失調症患者を対象とした。ベースラインとフォローアップ時(約2週間後)に、認知機能評価を行い、その検査バッテリに含まれるカテゴリ流暢性課題から発話データを得た。それに対し、特異値分解法によりアイテム間コサイン値(類似度)を算出し、tDCS施行前後の患者と対照健常者と比較した。高頻出の6動物(イヌ・ネコ・ゾウ・キリン・ライオン・トラ)のコサイン値行列について、患者-健常者間相関を求めたところ、tDCS施行後に相関は上昇し(前:r=0.12, 後:r=0.58)、有意傾向差を認めた。さらに、これら6アイテムと他高頻出のアイテムとのコサイン値求め、プロファイルを描いた。その結果、tDCS施行後には、ペット(イヌ・ネコ)、野生草食(ゾウ・キリン)、及び野生肉食(ライオン・トラ)のような特性を共有する動物毎にまとまりのあるプロファイルとなり、健常者のプロファイルパタンにより近いものになった。これら結果は、統合失調症患者の高次認知機能を改善の指標として、カテゴリ流暢性課題に対するテキストマイニング分析が有用であることを立証するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【概要】に挙げた本研究の目的①はほぼ達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的として挙げた②を遂行するために、特異値分解法により得るコサイン値が、構造化の指標として有効か否か予備的分析を行う。また、気本障害など、統合失調症以外の精神疾患患者に対しても、高次認知機能の評価におけるテキストマイニングの有用性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国内外の学会大会参加、発表は全て中止あるいはオンライン開催となったため残額が生じた。次年度は幾つかの学会は現地開催形式となり、その旅費に充てる。またデータ解析のための新たなコンピュータとソフトウェアを購入予定である。
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