研究課題/領域番号 |
20K03433
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
住吉 チカ 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (20262347)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 機能的転帰 / 労働転帰 / 予測モデル / 気分障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 疾患横断研究 |
研究実績の概要 |
【概要】本研究は、①語流暢性課題データから意味記憶の構造化を推定する評価法を確立する、②労働状態の予測に構造化指標を導入し、有効な場合予測を実践する、③目的①②の成果に基づき、研究領域規準(RDoC)の認知系における解析単位を拡充する、ことを目的としている。2024年度は、②の成果の臨床応用及び③の基礎データ準備を行った。
【主な知見】多施設共同研究機構である認知ゲノム共同研究機構(Cognitive Genetics Collaborative Research Organization:COCORO)の枠組みで収集された統合失調症患者293名を対象とした。前年度は、これら患者の労働状態(労働時間/週)の予測をロジスティック解析により行った。労働状態については、0時間より長、10時間より長、20時間より長、30時間より長の4基準を設けた。解析の結果、いずれの基準でも、陰性症状のExperience deficits因子(意欲や動機付けに関する障害)及び社会機能の自立実行領域が有力因子であることが明らかになった。今年度はこれら因子を用いて、患者個々人の労働時間を予測できる労働状態の予測モデルを構築した。さらに、Experience deficits因子及び自立実行領域得点を見出しとする推定労働時間早見表(例:10時間基準で〇〇%働ける)を作成し、予測結果を簡便に参照できるよう臨床適用を図った。これにより、臨床現場で患者に対し、客観的なデータに基づく労働転帰のフィードバックが可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【概要】に挙げた本研究の目的②はほぼ終了し、③の基礎データとなる予備解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
労働状態の予測モデルや早見表を、気分障害や自閉症スペクトラム障害にも適用可能かについて検討する。このために、現在、統合失調症、気分障害、発達障害に渉る疾患横断比較を行い、知的能力や自立実行能力の類似・相違について検討中である。またこのデータは、精神症状を基にする従来の診断と分類システム(例:DSM)とは異なり、認知機能や機能的転帰の観点から精神疾患を捉えるために寄与するデータとなると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍以降、国内外の学会大会はオンライン開催が増えたため残額が生じた。次年度は、現地開催の学会が更に増えると予想され、その旅費に充てる。
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