研究課題/領域番号 |
20K03450
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
安崎 文子 東京都市大学, 理工学部, 教授 (60738996)
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研究分担者 |
柴崎 光世 明星大学, 心理学部, 教授 (00325135)
桐生 昭吾 東京都市大学, 理工学部, 教授 (00356908)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 吃音の左脳機能不全 / 吃音者の聴覚情報処理障害 / 吃音の重症度別機序 / 吃音の重症度別介入 |
研究実績の概要 |
前回の基盤研究において,吃音当事者では,右耳で聞いた時に左脳言語野の活性が乏しく,左耳で聞いた時には左脳言語野の活性がみられた。そこで,脳機能以前に,聴覚面での障害を考えた。聴性脳幹反応検査を行ったところ,I波からV波の潜時において吃音当事者では聴覚伝導が全般的に遅い事,また左右の耳での差が大きく,聴覚モニターにタイミングのずれが生じることが推察された。また吃音が重症化すると,音は聞こえているが,聞き取りにくい聴覚情報処理障害を訴える症例もみられた。そこで,本研究では,吃音の機序を,自己モニタリング障害を基盤とした階層的な症候群と考え,重症化に伴い重複した問題を捉え,認知神経リハビリテーション介入とその効果判定を行い,障害の機序を検証することを目的としている。今年度においては,聴覚モニタリング障害の様相を更に明らかにするために,吃音当事者数名と対照流暢者数名に対して,言語聴覚刺激を用いて事象関連電位検査を行ってきた。また,吃音当事者においては,聴覚伝導の遅れがあり,特に左右の耳での差が大きかったことから,聴覚面での左右差を解消するための遅延聴覚フィードバックアプリを作成した。現在,数名の吃音当事者にアプリを使用していただき,効果検証を行っている。使用を開始したばかりだが,吃音当事者3名について,アプリ使用時において,吃音検査法による吃音の出現率に有意な減少がみられている。特に「音読」と「絵の説明」では,著しい改善がみられたが,吃音の重症度により効果に違いがあり,また自由会話では改善が少なく,更に検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吃音当事者及び,対照流暢者に対して,言語刺激による事象関連電位計測を行っている。言語音での弁別刺激に対して,吃音重度者では困難を示す場合がみられた。また,聴覚伝導の左右差を補う遅延聴覚フィードバックアプリを開発し,吃音当事者への使用を開始している。アプリの初期評価として,アプリを使用時,吃音検査法にて吃音の出現頻度が減少した。
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今後の研究の推進方策 |
言語刺激に対する事象関連電位での検査結果に基づき,聴覚情報処理障害のある当事者には,遅延聴覚フィードバックアプリに加えて,言語聴覚面の弁別課題を作成し,認知神経リハビリテーション介入計画を立てる。介入は少なくとも1年半以上行い,その介入効果について,吃音の出現頻度の評価とともに,近赤外線分光法や事象関連電位検査により,脳機能改善について効果判定を行っていく。
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