研究課題/領域番号 |
20K03457
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大塚 尚 東京大学, 相談支援研究開発センター, 助教 (60735075)
|
研究分担者 |
穴水 幸子 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (60255544)
古川 真由美 東京大学, 相談支援研究開発センター, 特任専門員 (80747519)
高野 明 東京大学, 相談支援研究開発センター, 教授 (50400445)
藤原 祥子 東京大学, 相談支援研究開発センター, 助教 (80632405)
榎本 眞理子 東京大学, 相談支援研究開発センター, 講師 (40632394)
伊藤 理紗 東京大学, 相談支援研究開発センター, 助教 (10832983)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アート / 表現 / グループ / 自殺対策 / 青年 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
2022年度の研究成果は大きく分けて4つある。
1つ目は、先行調査として行った心理的危機を経験した青年とのアート表現グループの成果をまとめ、学術雑誌に投稿した。2022年度中に修正を重ね、2023年4月箱庭療法学研究に研究論文として採択が決まり、公表予定である。 2つ目は、COVID-19の世界的流行という不測の事態の中、大学生の自殺関連指標に影響が見られるかを明らかにし、実情に即した自殺対策に資するため、新たに量的調査を追加した。学生相談機関利用者のデータを用いて、COVID-19前(2018-19年度)872名とCOVID-19後(2020-21年度)929名の比較を行い、希死念慮を含めた自殺関連指標が有意に低下していることを明らかにした。この結果は第46回日本自殺予防学会で発表した後、Asian Journal of Psychiatry誌に投稿し、公刊した。 3つ目は、2021年度に続き、国内の青年の自殺対策やアート活用の取組みの調査を実施した。COVID-19により国外の調査が困難な状態が続いたため、2022年度も『クロマニンゲン展実行委員会』『自殺予防と自死遺族支援・調査研究研修センター』などの関連団体と定期的に会合を実施し、自殺対策やアート活用の課題を検証した。加えて、2022年度は対面で開催された「第12回クロマニンゲン展」と、障害者福祉にアートを用いた取組みを行っている「しょうぶ学園」の視察を行い、関係者との意見交換を通じて今後の研究方針と課題の共有を図った。 4つ目は、2021年度に追加した事例におけるアート表現の研究利用を進めるため、関係者との打ち合わせや方針の検討を継続的に実施した。そして、当初予定していた事例研究のみならず、他者と共に表現することが参加者のメンタルヘルスや死生観に及ぼす影響を明らかにするためのワークショップ開催に向けて準備を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大が続いた影響により、2022年度も大学内での対面参集での活動が制限される状況が続いたため、アート表現グループ活動は実施できていない。これまでの成果報告や、関連団体の取組みを通じた課題検証、新たに追加したいくつかの研究の進捗状況と合わせ、「やや遅れている」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下の計画を進めていくことを予定している。
まず、アート表現グループについては、2023年夏頃から実施できるよう、現在所属機関の倫理審査申請を進めている。倫理審査後、2023年夏頃から2024年春頃にかけて、学生相談機関利用者を対象とした継続グループを実施し、アート表現や他者との創造活動が、自己感や心身の状態に及ぼす影響を明らかにしていく。さらに2023年度中に、単回のアート表現を用いたワークショップ型のプログラムも実施予定であり、これについても上記倫理審査を進めている。倫理審査後、2023年度後半に所属機関内で一般の大学生を募集してワークショップを実施し、アート表現が心身の状態や自死に関する態度などに及ぼす影響を明らかにしていく。これらの実施後、表現された作品の展示を実施し、作品鑑賞による鑑賞者の情動体験への影響を検証することを予定している。 加えて、分担研究者の担当事例の協力を得た、共同創造活動のワークショップも2023年度中に実施することを計画している。今後、対象と方法を確定後、関係機関への倫理審査を進めていくことを予定している。 これら課題を推進するために、アート表現の実践経験が豊富な臨床心理学者を新たに分担研究者に追加した。これにより、方法や分析、実際の運営面でのさらなる充実が期待される。また、COVID-19に伴う活動制限による研究計画の遅れがあるため、2024年度への延長申請も視野に検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大の影響により、海外訪問調査やアート表現グループが実施できていないため、次年度使用額が生じた。 今後2023年度から、アート表現グループやワークショップを順次開催予定であり、それらの研究計画で助成金を執行していく予定である。また、研究計画全体の遅れに伴い、2024年度に期間を延長することも検討している。
|