研究課題/領域番号 |
20K03458
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水上 喜美子 金沢大学, 医学系, 助教 (00387408)
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研究分担者 |
高橋 哲也 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 協力研究員 (00377459)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | せん妄 / 高齢者 / 精神科リエゾンチーム |
研究実績の概要 |
今年度は、当院における高齢期のせん妄患者の現状を明らかにし、精神科リエゾンチームの介入方法について検討した。精神科リエゾンチームに依頼があった336症例のうち新規(初診後に初回介入)の316例を分析対象とした。70歳以上の対象者(以下、高齢患者)は165名(男性101名、女性64名)で、このうち、せん妄がみられた高齢者は78名であった。当院においても、先行研究と同様、精神症状がみられ、身体疾患を有する患者では高齢であるほどせん妄リスクが高くなることを認めた。今年度は、これまでの研究結果を踏まえて、精神科リエゾンチームで院内向けのせん妄予防のパンフレットを作成した。また、せん妄ハイリスク患者を早期にアセスメントする方法や精神科リエゾンチームと身体科の医療者と連携して予防的に介入できる体制作りの必要性が認められ、来年度からリエゾンチームの体制を見直していくことが決定した。 さらに、せん妄の治療では、主として薬物や身体的要因の調整、環境調整に力点がおかれることが多いが、心理的な要因を見過ごすことができないとされている(岸本,2021)。田宮・田辺ら(2020)は、精神科リエゾンチームに依頼のある心理カウンセリングの特徴として、①心因が関与する適応障害があり、②日常生活動作がほぼ自立しており、③高齢者やせん妄による認知機能の問題が認められないこと、④悪性腫瘍のように経過が長期に及び身体疾患があることを指摘している。つまり、高齢でADLが保たれず、せん妄などがあると心理的介入が必要ないと判断されやすいが、“不安、ストレス、恐怖もせん妄に寄与する”(Young,2017)とも述べられており、せん妄への心理的支援について検討していくことも、今後の課題であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も、新型コロナウイルス感染症の対策がとられ、病院内では、家族の面会が禁止されていたため、計画通りに進行することが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、せん妄のリスク因子の分類をし、院内のせん妄対策に向けて具体的にどのようなことに取り組むべきかを検討する。また、精神科リエゾンチームの体制を変え、院内のせん妄予防にどの程度、効果があるのかを明らかにする。 そして、せん妄と診断を受けた患者の中で、脳波測定を実施していた人の脳波解析について、せん妄に関連する神経ネットワーク機能について分析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り実施できなかったため、予算を使用することができなかった。
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