研究実績の概要 |
令和3年度は、令和2年度に構築した、ペアが相互に自己意見を表出する課題を用いて、dual fMRIで脳活動を計測した。 実験においては、同性の初対面のペアを実験参加者とした(女性12ペア、男性8ペア。平均21.85±0.40歳、ペアの年齢差2.90±0.40歳)。相互に自己意見を表出する課題に参加することを通じて、事前に聴取した意見と比較して、自らの意見をペアの相手の意見に近づけること(意見変容)が起こることを確認した。さらには、意見の変容を通じて、ペア同士の親密度が高まることも確認した。さらには、同実験で得たfMRIデータについてもpreliminary解析を実施した。解析の結果、二者の意見が異なる際には、両側のinsula(peak = [-42, 22, 12], k = 1212; peak = [50, 38, 8], k = 948)およびdorsal Anterior cingulate cortex(peak = [-6, 44, 22], k = 1120)というpain matrixの活動を認めた。これは、意見の違いが発生した場合にneural alert systemであるpain matrixの活動が見られていることを意味する。この活動は、社会生物であるヒトができれば避けたいと思っている他者との意見の相違を痛みと捉えていることを示唆する。他者との意見の相違に起因する社会的痛みが動因となって自らの意見を相手に近づける形での意見の変容につながっている可能性が考えられる。すなわち、本実験により、カウンセリング場面などで意見変容を起こしうる動機付けに関する知見の一端を明らかにすることができた。
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