研究実績の概要 |
令和4年度は、令和2-3年度に構築・実験した、ペアが交互に自己の意見を表出する課題を用いて計測したdual fMRIでの脳活動データの解析を実施した。 今年度は、令和3年度に取得した同性の初対面のペア(女性12ペア、男性8ペア。平均21.85±0.40歳、ペアの年齢差2.90±0.40歳)を対象として解析を実施した。前年までの解析結果として、ペアの間での意見の相違が見られると、痛みを表象する領域であるpain matrixが賦活することを確認した。この結果に加えて、交互に自己の意見を表出することを課すことで、自らの意見を相手の意見に近づけること(意見変容)が起こることを確認した。意見の違いの程度により説明できる脳活動が見出される領域として、右下前頭回 (right inferior frontal gyrus, peak = [46, 28, -2], k = 192)を見出した。課題遂行を通して、右下前頭回と右側頭頭頂接合部 (right temporoparietal junction, peak = [58, -68, 36], k = 126)の間の機能的結合性が有意に強まることを確認した。これは、意見の擦り合わせを通じて、脳活動の変化が起きている可能性を示している。これにより、カウンセリング場面などで意見の擦り合わせ(意見変容)の動機付けに関する知見の一端を明らかにすることができた。 令和2-4年度は、コロナ蔓延に伴い追加でのデータ取得が困難であった。令和5年度は、追加データを解析することで、得られたデータの確実性を評価するとともに、執筆中の論文を完成する。
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