研究課題
本年度は新型コロナウィルスの影響で、予定していた調査が実施困難となったため、文献のレビューを中心に研究を進めた。「心の理論(Theory of Mind)」の定義や研究史、測定方法に関する先行研究を読み進める中で、多くの方法論が自閉スペクトラム症を念頭においたものであり、社交不安症の対象者に用いることのできる測定法は限定されていることが明らかになった。一方で、社交不安症者の表情認知に関する研究も、情報処理バイアスの文脈では実施されていること、ただし多くの研究では社交不安症者と対照群の比較を行っており、その弁別の際には不安や抑うつなどの内面化障害に関連する変数以外は測定されていないことも示された。次年度も一般大学生を対象とした教場での調査は困難であることが予想されるため、計画を一部変更し、対象者を一般成人とした上で、自閉スペクトラム症傾向と社交不安傾向を同時に測定し、オンライン調査としての実施が可能な「心の理論」課題と組み合わせ、その部分を先に実施することを検討する。その際、反応速度などの精緻な測定はしにくいと考えられることから、当該箇所に関しては対象となる人数を減らして、実験室内で別途測定を行う。オンライン調査ではIQ値などの測定も実施が難しいことから、最終学歴等の指標を用いて推計を行う。調査は匿名での実施とし、対象者の人数は大学生対象を想定していた当初の水準よりも増やすことで、デモグラフィック変数の影響性を少なくすることを考えている。
4: 遅れている
新型コロナウィルス感染症の流行、および緊急事態宣言の発出の影響で、遠隔授業対応や家庭保育に充てる時間が予定外に大きく取られたこと、また教場での一般大学生を対象とした調査や実験が困難であったことから、予定よりも研究の進捗が遅れている。2021年度も遠隔授業が続いていることから、調査対象者や方法を変更しての実施を検討している。
当初は一般大学生を対象とし、Reading the Mind in the Eyes Test の運用のためのプラットフォームを作成した上で、子どもを対象とした調査を実施する予定でいたが、所属機関に来校してもらうことが困難であることから、調査会社等を通じて、オンライン調査として実施可能な部分と、実験的操作が必要な部分を切り分けて研究を進める。また、感染症対策を十分に行いながら、当初よりも対象となる人数を減らして、少人数制での実験実施を検討する。
本年度は調査・実験の実施が予定通りにできなかったことから、プラットフォーム開設のために見込んでいた費用を翌年に繰り越した。また、学会発表のための旅費も計上していたが、すべての学会がオンラインでの開催となったため、その費用についても支出しなかった。
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Journal of Behavioral and Cognitive Therapy
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10.1016/j.jbct.2021.01.003