研究課題/領域番号 |
20K03470
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
二宮 朗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (30464845)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マインドフルネス認知療法 / 不安障害 / VR |
研究実績の概要 |
前年度に作成したvirtual reality(VR)による曝露を導入したマインドフルネス認知療法プログラムを用いて、単群前後比較試験のデザインでpilot studyを行った(新型コロナウイルス感染症の完全な収束がない状況で、その流行が去った間の期間を狙って、短期間で募集をしたため、N=4と少人数となった)。 具体的なプログラムの内容については、VRによる曝露をマインドフルネス認知療法をメインとする全8回のプログラムに組み入れ、被験者にとって苦手な場面に段階的に曝露した。プログラムの実施可能性については、従来のプログラムと比べ、実施可能性に大きな問題がないことを示した(組み入れ率100%(4/4名)、脱落率25%(1/4名)、研究参加率81.3%(26/32))。一方で上記結果やプログラム被験者からの意見も参考にし、さらなるプログラムやVRコンテンツの改良を行った。 具体的な変更点としては、以下の二点が挙げられる。一点目は、VRによる曝露の導入時期の変更である。8回のマインドフルネス認知療法のプログラムの中にVRによる曝露を組み入れると慌ただしいスケジュールとなり、被験者に戸惑いもみられた。そのため、VRによる曝露は8回の認知行動療法を実施した後で導入することとした。二点目としてはVRコンテンツをグラフィックで構成されたものから実写に切り替えたことである。被験者からはコンテンツに十分な不安をもたらすほどのリアリティがないとの報告があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度のメインのプロジェクトであった単群前後比較試験のデザインでのpilot studyを期間内に実施した。 一方で新型コロナウイルス感染症の流行下において、以下の実施が困難であった。 ・研究計画、プログラムの内容について海外の専門家と意見を交わすために、海外への学会などへの参加を計画していたが、海外渡航が現実的に不可能であった。 ・令和4年度に入ってすぐにRCTを実施するために、令和3年度内からRCTの被験者のリクルートを行う予定であった。しかし、pilot studyが対面でのプログラムの実施であったため、感染予防の観点などから研究実施に対する懸念が常にあった。新型コロナウイルス感染症の完全な収束が見込めない状況で、その流行が下火になった期間を狙って行うなど時間的な制約があり、予定の実施が遅れてしまった。そのため、その遅れがRCTの準備にも影響を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
単群前後比較でのpilot studyにおいて、マインドフルネス認知療法とVRの曝露を導入したプログラムの実行性に問題のないことを確認できた。 今年度は最終的な大規模RCT実施のために、primaryには、1)feasibilityを確認すること、secondaryには2)サンプルサイズ計算のために必要なデータを得ることを目的とする探索的RCTを実施する。介入群はマインドフルネス認知療法プログラム+VRを用いた曝露、コントロール群はマインドフルネス認知療法プログラムのみとする。 また本研究によって得られた結果を、費用対効果の観点から見た場合にも意味があるかどうかの検証を行う。それに加えて、政策決定への重要な判断を行うための材料を提供として財政的インパクトの評価も実施する。 これらの結果はなるべく速やかに学会や論文で公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、研究実施の計画に遅れが出ており、今年度に遅れを取り戻すこともできず、想定していた人の雇用もを行えなかったことなどが生じた。また当初予定していた海外への渡航なども実施することが困難であった。今年度に遅れを挽回し、 従来の計画予定通りに研究を終えるためにも、人員の雇用などを元々の計画よりも増やし、研究を実施していく予定である。
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