研究課題
本研究は、高齢者の幸福感に及ぼす文化的価値指標の影響を明確にし、日本国内における高齢者の心身の健康や幸福感の地域差の要因を抽出して、文化的影響を考慮した地域活動プログラムを考案することを目的として行った。アメリカ合衆国HRSデータを分析した結果、地域による高齢者の抑うつ感が出身地域の教育によって異なり、現在の収入や健康状態に違いが出る可能性が示唆された。ヨーロッパ25カ国のSHAREデータを用いて、国の文化的価値観と幸福感との関連を分析した結果、快楽主義の価値観が高い国では、高齢になっても幸福感の低下が抑制される可能性が示された。これらの結果を基に、最終年度では日本における幸福感の地域差と文化的価値観との関連を調査した。快楽主義とは、人生の自己コントロール感が高く、余暇の時間を大切にし、友人がいて、自由であることなどで構成されている(Hofstede et al., 2010)。本研究では、7項目の快楽主義尺度を作成した。日本人調査の結果、快楽主義の価値観を持つ人ほど抑うつ感が低く、幸福感は高いことが示された。日本人データにおいて、快楽主義が高いほど幸福感も高いことが示された。年齢が60歳以上、スーパーなど生活が便利、600万円以上の年収、ソーシャル・キャピタルが高い人ほど快楽主義の価値観も高いことが示された。健康指標と関連のある不確実性の回避尺度も作成した。不確実性の回避が高い国や地域では、曖昧な状況や未知の状況に脅威を感じ、不安を感じやすいことが特徴とされている。日本人調査では、「変化・違いへの回避」が高い場合、高齢者への偏見や差別を指すエイジズムが高いことが示され、幸福感も低くなる傾向が示唆された。幸福感の高い地域づくりには、ソーシャル・キャピタルが重要な要因であると考えられる。地域の"祭り"など、人と人をつなぐ活動が幸福感の高い地域の醸成に必要かもしれない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
JAMA Network Open
巻: 7 ページ: e2352809
10.1001/jamanetworkopen.2023.52809
医学のあゆみ
巻: 288 ページ: 291-295
Journal of Adult Development
巻: - ページ: -
10.1007/s10804-023-09457-4
梅花女子大学看護保健学部紀要
巻: - ページ: 1~9
10.20832/00000300
https://wps.itc.kansai-u.ac.jp/hirokawa/?doing_wp_cron=1712128788.8656020164489746093750