研究課題/領域番号 |
20K03477
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
本山 宏希 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (30555230)
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研究分担者 |
川端 康弘 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30260392)
成本 忠正 東京福祉大学, 心理学部, 准教授 (60434560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心的イメージ / 視知覚処理 / 抑制 / 促進 / fMRI |
研究実績の概要 |
本研究では,視覚イメージ想起中にイメージの想起を妨害する視知覚処理を抑制する機能が心内に実在するか否かを検証する。本年度は,視覚イメージ想起中に視知覚情報処理が低下するか否かを検証する行動実験を実施した。実験では,イメージ想起中に色知覚処理が必要な課題を実験参加者に行わせた。具体的には,イメージ生成時には,典型的な色をもつイメージ対象(たとえば,りんご【赤】) をイメージさせる。そのイメージを想起している間に赤色の文字列を瞬間提示し,参加者はその文字列が単語か非単語かを判断する語彙性判断を行った。また別の条件では,イメージ対象の典型色(たとえばリンゴ【赤】)とは異なる緑色の文字列を瞬間提示し,その語彙性判断を求めた。イメージの想起中に競合する視知覚処理が抑制されるならば,イメージと同色の知覚処理 (りんごをイメージ中は赤色の処理)は抑制されるため,【イメージ対象と同色の文字列の語彙性判断】の成績が 【イメージ対象と異色の文字列の語彙性判断】より悪くなるだろう。 実験の結果,予想とは逆に,【イメージ対象と同色の文字列の語彙性判断】の方が【イメージ対象と異色の文字列の語彙性判断】より成績が良くなった。イメージ想起により生じる色情報処理が外界から入力された色知覚処理を促進したのは,イメージ開始から語彙性判断対象の文字列が提示されるまでの時間が長かったためかもしれない。イメージ時間が長いと,イメージ像を生成中ではなく,できあがったイメージ像の保持がなされている段階で文字列が提示され,その色知覚処理がなされた。イメージ像の保持段階では,イメージ想起により生じる色情報処理があまりなされていなく,イメージ像と知覚像との色情報処理が干渉しなかったのかもしれない。今後は,イメージ開始直後に文字列を提示し,イメージ像生成中に色知覚処理が妨害されるか否かを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年度はコロナ禍の影響から,学生と対面することができなかった。上記の行動実験は,刺激提示および反応時間の測定にms単位の時間制御が必要なため,オンラインでの実験実施はできない。そのため,上述した行動実験の実施は一昨年度に実施する予定であったが,それができず,昨年度に実施した。コロナ禍の影響により,当初の計画から1年遅れて研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,研究実績の概要で示した(1)イメージ生成中に視知覚情報処理が低下するか否かを検討する行動実験と(2)イメージ生成中に視知覚情報処理を抑制 する機能を担う脳部位を特定するfMRI実験を行う予定である。 (1)については,昨年度実施した実験の手続きのイメージ生成時間を短くして実施する予定である。その後,行動実験の結果を整理し,(2)のイメージ生成中に視知覚情報処理 を抑制する機能を担う脳部位を特定するfMRI実験の実施する予定である。また,(1)の行動実験の結果は,学会で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時には,昨年度中にfMRI実験を行う予定であったが,計画はコロナ禍の影響で1年遅れており,fMRI実験の実施は今年度以降になる予定である。そのため,fMRI実験で必要となる予算は昨年度は使用せずに持ち越し,今年度以降に使用する予定である。また,研究分担者との打ち合わせを複数回行う予定であったが,コロナ禍であることもあり,1度しか実現できておらず,当初予定していた旅費の使用も予定より少なくなっている。さらに,この研究の前提となる「視覚イメージ想起を抑制する機能を担う脳部位の特定」に関する実験データを論文化し投稿するための費用を確保しているが,その準備が年度内に終わらず現段階では投稿できていないため,その費用も今年度以降に使用する予定である。
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