研究課題/領域番号 |
20K03492
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大杉 尚之 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90790973)
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研究分担者 |
長谷川 国大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (10741837)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視覚的短期記憶 / 情景場面理解 / 概念的短期記憶 |
研究実績の概要 |
人間の視覚システムは、視野の中心付近でしか詳細な情報を取り込めない。そのため,眼を動かして視点を移動させ,その度に得られる断片的な情報を見て (符号化),覚えて (保持),これらを統合することで場面全体を理解していると考えられる。本年度は,ブラウザを利用したオンライン実験による,認知実験実施環境の整備および断片的な場面情報の符号化プロセスの解明のための検討を行った。具体的には,従来の研究 (e.g., Potter et al., 2002; 2004) で用いられていたような複数の異なる場面全体の画像(例えば,動物,人物,自然風景,都市風景)を刺激画像として用い,学習時の画像呈示時間と再認時の系列位置を操作した実験を行った。その結果,学習時の画像呈示時間が短い場合には,再認系列位置に伴う急速な再認成績の低下の結果が再現された。また,画像呈示時間が短い場合に,再認系列位置に伴い,判断基準が保守的に(見ていないと)判断する傾向があることも示された。また,同一場面の断片画像を連続呈示し,学習時の画像呈示時間と再認時の系列位置を操作した実験も行った。複数の異なる場面全体の画像を使用した場合に比べて,再認時の感度が低下すること,学習時の画像呈示時間を長くすることで,一定程度の成績の改善が見られることが明らかとなった。また,画像呈示時間が長くなると,判断基準がリベラルに(見たと)判断する傾向があることも示された。以上より,1)ブラウザを利用したオンライン実験でも先行研究の結果が再現できること,2)符号化に利用可能な時間を増やすことで,独立した場面でも断片画像でも記憶成績が向上すること,3)複数の場面画像全体を記憶する場合と,同一場面の断片画像を記憶する場合では,再認時の判断基準の変化が異なることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,実験室環境で対面行う予定の実験を,オンラインのブラウザ環境で実施した。先行研究の結果をオンライン実験環境下でも再現することができたことから,本来の研究計画に従って1年目に実施予定の実験を実施した。以上のような経緯から,当初予定していた研究計画に比べて遅れが生じている。また,最新の研究知見の動向,オンライン実験環境での実施可能性,対面実験環境の再構築なども考慮しながら,研究計画の練り直し も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
最新の研究知見の動向の再整理,オンライン実験環境での実施可能性,対面実験環境の再構築などを進めていく。特に,オンライン実験環境で先行研究の結果が追試できたことから,今後は2年目,3年目に予定していた研究計画を中心にオンライン実験を実施していく予定である。また,最新の研究知見の動向の再整理を踏まえた今後の研究計画の見直しについて共同研究者と協議の上,進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる感染拡大を防ぐため,オンライン実験に切り替えた他,対面での学会発表の参加や研究相談を行わなかったため。
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