研究実績の概要 |
本年度は以下の2点を検討した。 (1)レム睡眠が意思決定課題の成績に及ぼす影響 日中の仮眠中のレム睡眠が意思決定課題の成績に及ぼす影響を検討した。健常成人120名を対象とし,仮眠群80名,覚醒群40名にランダムに割り付ける実験デザインを計画した(UMIN000041885)。仮眠群は90分間の仮眠をとり,覚醒群は90分間の覚醒を維持した。意思決定課題にはIowa Gambling Task(IGT)を用い,仮眠/休憩前後に実施した。現在までに取得した60名(26.4±7.8歳,仮眠群43名,覚醒群17名)のデータを解析した。レム睡眠の出現の有無で仮眠群をレム群26名とノンレム群17名に分けた。IGTの課題成績について,ブロックの主効果が見られ,ブロックが進むごとに成績が向上したが,群の主効果及び,群とブロック間の交互作用は見られなかった。現時点では目標サンプル数の半分しか満たしていないため,全データ取得後に結果を再度報告する。 (2)高密度脳波計を用いたレム睡眠中の急速眼球運動に関連して生じる脳活動の検討 レム睡眠中の急速眼球運動前には,前頭前部優勢に急速眼球運動前陰性電位(pre-REM negativity, PRN)が出現し,その発生源は腹内側前頭前野などの意思決定と関わる脳部位に推定される(Abe et al., 2004,2008)。しかしこれらの研究では26chの脳波電極を用いていたため電流源解析のための電極数としては不十分である。そこで128chの高密度密度脳波計(BIOSEM社ActiveTwo)を用いた検討を行った。被験者8名(22.3±2.2歳,最終目標14名)を対象として解析を行った。その結果,前頭前部優勢の緩徐陰性電位がレム睡眠中の急速眼球運動前に出現しており,その発生源は,腹内側前頭前野を中心とした領域に推定され,Abe et al. (2004,2008)の結果が高密度脳波計による計測でも再現された。今後は就床前の意思決定課題が急速眼球運動前の腹内側前頭前野の活動に及ぼす影響を検討する。
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