研究課題
基盤研究(C)
記憶の固定とは,学習直後の脆弱な記憶が安定した長期記憶に変化する過程であり,これまでの研究において,金銭的報酬が提示されることによって,記憶の固定が促されることが示されている。一方,社会的報酬の一つである魅力的な顔が提示されているときに,報酬系に関する脳領域が活性化することが認知神経学的アプローチによって示されている。そこで,本研究では,社会的報酬が記憶の固定に及ぼす促進効果を検討するとともに,そのメカニズムを解明することを目的とする。
認知心理学
報酬は,金銭的報酬に限らず,食物や睡眠などの生理的報酬,他人からの賞賛,信頼,尊敬などの社会的報酬といったものが存在する。その中でも,魅力的な顔が社会的報酬となりうることが近年の先行研究で明らかにされていることから,「社会的報酬としての魅力的な顔が,金銭的報酬と同様,記憶の固定を促進するのではないか」という着想自体に学術的意義があり,仮説通りの結果こそ得られなかったものの,記憶と報酬の関係については,今後,継続して総合的に検討していくべき社会的意義を有した重要な課題であると言える。