研究課題/領域番号 |
20K03500
|
研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
繁桝 博昭 高知工科大学, 情報学群, 教授 (90447855)
|
研究分担者 |
門田 宏 高知工科大学, 情報学群, 准教授 (00415366)
金山 範明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (90719543)
竹市 博臣 国立研究開発法人理化学研究所, 情報システム本部, 専任技師 (60242020)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 3次元知覚 / 触覚 / 自己受容感覚 / 多感覚統合 / fMRI / MVPA / バーチャルリアリティ / HMD |
研究実績の概要 |
令和2年度は以下の実験により,3次元知覚と身体の相互作用について検討した。 ヘッドマウントディスプレイ使用時に,移動する物体をバーチャルな自己の手で追従し,その物体が静止ししたことに応じて手を止めたときに,静止しているはずの物体の方が手の動きと逆方向に移動して見えることがある。この現象について自己の手の運動の影響を検討した結果,主観的にはこの現象が2次元映像の誘導運動に比べてより明確に知覚されると感じられたが,手の運動出力情報は物体の移動量の知覚には影響せず,自己の手を基準とした物体の運動の弁別感度が高くなることで,この現象がより明確に知覚されていることが示され,3次元空間内の対象の運動知覚における自己身体の影響の特性について明らかにした。 能動的触覚による3 次元空間情報の付加がアモーダル補完による部分遮蔽された対象の認知に及ぼす影響を検討した研究では, 触覚がアモーダル補完を促進する効果は見られず,触覚による3次元の表象が必ずしも視覚による処理に寄与せず,ある程度独立して処理されることが示唆された。 身体知覚の変容が3次元知覚に及ぼす影響を検討した研究では,VR上で拡張した身体におけるポインティングの特性について実験を行い,ターゲットまでの距離に応じて拡張した身体に適応的な制御を行っていることが示された。 fMRIの実験では,視覚野において,物体の3次元の方位に応じた把持運動に関連した識別が多ボクセルパターン解析によって可能かについて検討した。実験の結果から,身体運動出力に関連した明確な脳活動を視覚皮質に生じさせるためには,現実に把持可能な物体を呈示する必要があることが分かり,実物の棒状の物体を用いて実験を実施した。また,同様の解析により,奥行き手がかりの情報によらない一般的な3次元の表象が頭頂間溝(IPS)野において処理されていることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は新型コロナウィルスの感染対策によりMRIを用いた実験ができない期間があり,当初の予定していた参加者数のデータが取得できなかった。しかし,バーチャルリアリティによる行動実験においてはおおむね順調に実施することができた。また,能動的運動による触覚刺激が3次元的な知覚を伴うアモーダル補完に及ぼす影響を検討するため,アモーダル補完の専門家に研究分担者として年度途中から参加いただくことになり,当初の予定よりも進展した点もあった。以上より,総合的にはおおむね順調に研究を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成3年度5月現在はMRIの実験が可能であり,この状況が続く場合は,実物を用いて運動出力に関わる3次元方位の知覚処理過程の脳領野の実験を継続して実施し,本年度中に予定の参加者数を満たすことができる予定である。MRIの実験が継続できない状況になった場合は,HMDを用いたVR環境上の行動実験の研究を進めることに,より注力する。実験が全体的に実施不可能になった場合は,翌年度に研究計画を持ち越す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の研究機関において新型コロナウィルスの感染対策により実験が実施できなかったこと,研究打ち合わせのために相互の研究機関に出張ができなかったことから,当該年度に分担金を使用することがなく,次年度に使用することとなった。本年度に各研究機関に訪問することが可能となった場合は主に旅費として使用する。旅費として使用できない状況になった場合は,主に実験装置の物品費,実験参加者の謝金として使用する。
|