研究課題/領域番号 |
20K03501
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
阿部 晶子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (60250205)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 左半側空間無視 / 左無視性失読 / 視線解析 / 文の配置 / 文の構造 |
研究実績の概要 |
2021年度は、①縦書き文の読みに文の配置および改行位置が与える影響(研究1)と、②横書き文の読みに文の配置と構造が与える影響(研究2)を検討した。 研究1 【目的】左半側空間無視患者が縦書き文を音読する際の視線の動きに、文の配置や語中の改行が与える影響を明らかにする。【方法】対象:左半側空間無視患者2例と対照群の健常者6名である。材料:課題文は1文2行の縦書き文で、左右に2文ずつ配置して用いた。2行の課題文はすべて語中で改行し、2行目の行頭の文字の推測のしやすさを統制した。装置:アイトラッカー、Windows PCおよび23インチモニターを用いた。手続き:被験者に課題文の音読を求め、音読時の視線をアイトラッカーを用いて計測した。【結果・考察】左半側空間無視患者は2例とも、すべての行を音読可能であった。しかし、症例の視線の軌跡は健常者のそれとは異なり、画面の右側と左側の行でも異なっていた。症例1については、2行目の行頭の文字が推測しやすくなるように改行を行った条件で、サッケード回数が最大になった。本研究の成果は、研究協力者とともに日本高次脳機能障害学会にて発表した。 研究2 【目的】左半側空間無視患者が横書き文を読む際の眼球運動に、文の配置および構造が与える影響を明らかにする。【方法】対象:左半側空間無視を認める患者4例と対照群の健常者10名である。材料:課題は横書き2段組みの文で、行末が述部となる条件と主部となる条件を設定した。装置:研究1と同様である。手続き:被験者に課題文の音読を求め、音読時の視線をアイトラッカーを用いて計測した。【結果・考察】行頭に向かう視線の停留位置は、文の配置による差が見られた。一方、文の構造による差は明らかでなく、課題を改良して検討をしなおす必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、左半側空間無視患者と健常者を対象に、2種類の音読課題を実施した。左半側空間無視患者が縦書き文を読む際の視線の動きを調べた研究は知られていないため、研究1から得られた知見は価値があると考える。論文投稿を行うためには、対象者数を増やすことが好ましいが、コロナウィルス感染症のために、データ収集が当初の予定よりも遅れている。2022年度も継続して左半側空間無視患者と健常者を対象としたデータ収集を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
研究1:縦書き文を音読する際の視線計測から得られた知見は論文発表に値すると考え、2022年度も継続してデータ収集を行う。 研究2:文の構造による差を検討するための課題の改良に力を注ぐ。2022年度前半に課題の改良を終え、2022年度後半からコロナウィルス感染症に対する対策を講じながら、データ収集を行う計画である。 研究1、研究2ともに、コロナ禍においては、症例のデータ収集は困難が予想される。その場合には、健常者を対象に、左空間に注意が向きにくい状況下(左半側空間無視に近い状態を人為的に作り出した状態)における音読時の視線の軌跡を調べ、通常時のそれとどのように異なるかを明らかにすることで、研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、実験刺激を提示するためのソフトウェアの購入、および学会参加費および旅費に助成金を使用した。第85回日本心理学会、第45回日本神経心理学会はオンライン開催となり、旅費が必要なかったために残額が生じた。今年度の残額は、次年度の学会参加旅費として使用する計画である。
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