研究実績の概要 |
一般のトロイダル代数gtorに対して、数年前から部分的に得ていた楕円量子トロイダル代数Uq,k,p(gtor)の定式化を完成させた。水平・垂直と呼ばれる2つ部分代数が存在し、それらは共に楕円量子群Uq,p(g) (gはgtorに関連するアフィンリー環)に同型であることを示し、それらの間に自己同型を構成した。これは量子トロイダル代数Uq,k(gtor)における同様な構造の楕円関数型への拡張になっている。また、Uq,k,p(gtor)のZ-代数の構造を調べ, 楕円量子群のときと同様に, 楕円変形を受けずに量子トロイダル代数のものと共通であることを示した。また、Z-代数は0でないlに対してUq,k,p(gtor)のレベル(l,m)表現の既約性を支配することを示し、全てのsimply laced トロイダル代数の場合にl=1の既約表現を構成した。 さらに、 glN型の楕円量子トロイダル代数のレベル(0,1)表現(q-Fock表現)の構成を行い、それがアフィンA型箙多様体上のトーラス同変楕円コホモロジーへのUq,k,p(glN,tor)の作用を与えるという予想を与えた。 一方、A. Smirnovが構成したHilbert概型上のトーラス同変コホモロジーに対する楕円stable envelopeを手掛かりに、楕円量子トロイダル代数Uq,t,p(gl1,tor)の頂点作用素を構成し、それがstable envelopesに対する正しいshuffle代数の構造を与え、さらに、頂点作用素の期待値としてHilbert概型の vertex function (頂点関数)、即ちP1からHilbert概型へのquasi map countの生成母関数、が得られることを示した。これより、構成した頂点関数はUq,t,p(gl1,tor)の標準余積に関する繋絡作用素であることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
楕円stable envelopeを手掛かりに楕円量子トロイダル代数Uq,k,p(glN,tor)の標準余積に関する頂点作用素の構成を進め、アフィンA型箙多様体に対する楕円stable envelopesのshuffle代数構造の導出や頂点関数の導出を行う。また、頂点関数に対するq-KZ方程式やそれに双対な量子差分方程式を導出し、シンプレクティック双対性との関連を調べる。
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