研究課題/領域番号 |
20K03508
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
張間 忠人 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30258313)
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研究分担者 |
和地 輝仁 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30337018)
五十川 読 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系理数グループ, 教授 (80223056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 完全交叉環 / 強レフシェッツ性 / 余不変式環 / シューア・ワイル双対性 / アルティン・ゴレンスタイン環 / Cohomological Blowup 代数 / 高階弱レフシェッツ性 / 中心単純加群 |
研究実績の概要 |
研究代表者の張間は、昨年度に引き続き、次数が連続するべき乗和多項式で定義される完全交叉環の中心単純加群の生成系について調べた。3変数の場合はうまく生成系を記述することができた。さらに、n変数の場合を試みた。 研究分担者である和地氏は、複素鏡映群の余不変式環のレフシェッツ性について研究を進め、ここまで得られた成果をまとめ、2021年9月にオンラインのMFO-RIMSの共同研究集会で講演を行った。また、レフシェッツ性とシューア・ワイル双対性について、過去に得られた成果や新しい具体例の計算をまとめ、同10月にRIMSで行われたオンライン集会で講演を行った。 研究分担者である五十川氏は、2-クロネッカークィバーの表現論を利用して、代数閉体を係数とする2変数多項式環上の次数付き加群の弱レフシェッツ性を判定する条件を与えた。また、0次局所コホモロジー関手の部分関手のうち、極大イデアルによる消滅から定まるソークル関手に付随する概正則列を弱ガンマー正則列と名付けその基本的な性質を調べた。いずれも論文としてまとめ投稿した。 研究協力者である渡辺氏は、国外の研究者4名とリモートによる共同研究をはじめ、アルティン・ゴレンスタイン環に関する一連の結果をまとめ、2編の論文が専門誌に受理された。主要結果は次のとおりである。(1) cohomological BlowUp Gorenstein algebra(BUG と省略) の定義を導入した。BUGはアルティン・ゴレンスタイン環の写像 A → T に対して定義される。BUGは、複素多様体XのYに沿ったBlow upをX'とすると、X'のコホモロジー環をXとYのコホモロジー環で記述するものである。(2) A → T が上への写像であれば、A'は標準的な次数付き可換環となる。(3) BUGによって、強いレフシェッツ性は保たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
渡辺氏の研究では、トポロジストのChris McDaniel 氏、Larry Smith 氏との共同研究により、幾つかの意外な知見と結果が得られた。レクチャーノート「Lefschetz Properties」の出版以降、トポロジー的観点からも、アルティン・ゴレンスタイン環を考察することが可能となり、研究領域が大幅に拡大するなど、当初の計画以上に進展している。例えば、Conneced sum、Thom Class、transition element、fundamental classなど、新たに可換アルティン環論に導入された概念である。アルティン・ゴレンスタイン環を多様体のコホモロジー環と捉えると、多くの示唆が得られ、成り立つはずの命題が予想できる。 和地氏の研究では、新型コロナウィルスの影響で、数学会の対面開催中止に代表されるように、集会や研究打合せが思うように行うことができなかった。そのような情勢であるが、オンライン集会での講演を行えたため、「やや遅れている」と判断した。 五十川氏の研究では、3変数のべき乗和対称式で生成されるイデアルの完全交叉性とその剰余環の中心単純加群に関する研究分担を担っている。重み付きヒルベルト級数および仮想重み付きヒルベルト級数を導入しこれらを用いて、弱レフシェッツオーダーについて調べている。予定では、中心単純加群との関係も明らかにしたかったがやや遅れており、論文として投稿するに至らなかった。 張間は、学内業務に追われ十分に研究の時間がとれず遅れている。以上の理由から、全体としては「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「基礎体の標数が0であれば, 完全交叉環はSLPを持つ」という予想があり、この証明が究極の目標だが、単に「完全交叉」という条件だけでは、手掛かりさえもないというのが現状である。しかし完全交叉環に対称群が作用するという条件を付けると、部分的な結果が得られることが次第にわかってきた。渡辺氏は、完全交叉環に次の3条件を付加して、レフシェッツ性問題を考察する。(1)同次数モノミアル完全交叉のDeformationであり、対称群が作用する。(2)対称群の作用で、生成元が変数と同様に置換される。(3)変数の和が一般元である。張間は、引き続き、次数が連続する対称式で定義される完全交叉環のレフシェッツ性問題について考察する。 和地氏は、多項式で生成されるアルティン・ゴレンスタイン環のレフシェッツ性についての研究を、鏡映群や、リー群・リー代数の表現、概均質ベクトル空間の知見を、より一層活用して進める。また、研究打合せを通して研究を進展させたり、学会等での発表で成果発表を行ったりする。 五十川氏は、高階弱レフシェッツ性と中心単純加群との関係を現在検討中の弱レフシェッツオーダーや重み付きヒルベルト級数を用いて調べることを継続する。遠隔で研究打合せを実施し、現在までに得られた結果をまとめて論文にする。また、コンピューター代数プログラムを利用して、3変数のべき乗和対称式で 生成されるイデアルのマコーレー生成元を具体的に計算し、解析の糸口を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、海外での集会に参加できなかったり、国内においても、数学会の対面開催が中止されるなどした他、大学のルールで出張ができなかった時期も長く、本来旅費として使用するはずだった研究費が使用できなかったため、研究費の次年度使用が生じた。次年度も感染状況によっては旅費としての支出が困難であることが見込まれるため、遠隔で情報交換する際の機器や参考図書等の物品費として有効に使用するなど、研究費の使い方も大きく変更せざるを得ないかもしれない。
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