研究課題/領域番号 |
20K03511
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山崎 愛一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10283590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有理性問題 / 代数的トーラス / 近似定理 / Hasseの原理 / flabby resolution / 数論 / 代数幾何 / 計算機代数 |
研究実績の概要 |
kを体、Gをkの絶対Galois群とする。このとき、k係数代数的トーラスTと、Tのcharacter moduleをG加群とみなしたMは一対一に対応することが知られている。特にkが代数的数体でTがノルム1トーラスの場合は、Tの弱近似定理の成否を表す量としてA(T)、TのHasseの原理の成否を表す量としてШ(T)が知られている。Mのflabby classを[F]とするとき、完全列 0 -> A(T) -> H1(F) -> Ш(T) -> 0 が成り立つことが知られている(Voskresenskii)。H1(F)自体は一般のk,Tに対して定義できる。 私は新潟大学の星明考さんとの共同研究で、主に次の3つの成果を得た。第一に、rank5以下の代数的トーラスに対して網羅的にH1(F)を計算した。第二に、kが代数的数体でTがMathieu群M11, M12, M22, M23, M24のノルム1トーラスの場合にШ(T)=0が成り立つ必要十分条件を決定した。第三に、kが代数的数体でTが15次以下のノルム1トーラスの場合にШ(T)=0が成り立つ必要十分条件を決定した。これについてはGalois拡大の場合はすでにいろいろ知られていたが、非Galois拡大の場合は7次までしか網羅的に知られていなかった。それを、理論的にも技術的にも工夫されたアルゴリズムを用いることにより15次の場合まですべて解決した。この結果の応用例として玉川数τ(T)を計算することができる(小野の定理)。 もともとШ(T)は数論的な視点から捉えられる量であった。それを私と星さんは世界で初めて、数論、代数幾何、計算機代数の分野横断的な視点から捉えることによりさまざまな現象を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の欄に書いたШ(T)についての結果は現在論文投稿中である(プレプリントarXiv:1910.01469,arXiv:2003.08253 参照)。また、本研究で開発したアルゴリズムはホームページ上で公開し、興味のある人は誰でも無料でダウンロードして使用できるようにした。 2020年度は新型コロナウイルスの影響で対面型の研究打ち合わせができなかった。しかし共同研究者である新潟大学の星明考さんとはZoomによるオンライン研究打ち合わせを活用することにより、今まで以上に有効に討論等をすることができた。一方で海外の研究者との交流は、主にメールでのやり取りのみになってしまい、以前よりも減ってしまった。 2020年度にこの科研費で購入した計算機は以前の計算機の数倍の性能があり、研究に大いに役立ち、いままで不可能だった計算が可能になった。研究により得られたデータや計算機プログラムは消えないように遠隔地バックアップを行ってきた。災害により突然停電した場合でも2019年度までは2か所で同時に停電することがなかったため、従来型のraid6によるバックアップでもデータが守られた。2020年度には2か所で同時に突発的な停電があったが、新しい計算機によるraid-z2型のバックアップのおかげでデータを失わずに済んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、数論、代数幾何、計算機代数を横断的に用いて研究を進める。研究成果は論文にまとめて発表し、開発したアルゴリズムはホームページに公開する。成果発表に関しては、今現在では対面型のシンポジウムが制限された状態であるが、機会があればオンライン型あるいはハイブリッド型のシンポジウムで成果発表をしたい。 海外の研究者との交流については、新たに本研究に興味を持った研究者と交流を持つためには対面型の研究打ち合わせが必要だと考えられるが、これは新型ころないウイルスの影響が今後どうなるかに左右されると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は対面型の研究打ち合わせや研究成果発表ができなかったため、旅費が0だったので次年度使用額(B-A)が0より大きくなった。
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