研究課題/領域番号 |
20K03513
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東谷 章弘 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (60723385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組合せ的変異 / 格子凸多面体 / エルハート多項式 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新概念である「組合せ的変異」を用いた格子凸多面体の理論の構築である。具体的には、 課題1:格子凸多面体の組合せ的変異に関する不変量の開発 課題2:組合せ的変異を用いた格子凸多面体論の構築 の2つに取り組む。 課題1について、2次元の場合において開発された組合せ変異不変量である“singularity content”に関して、singularity contentの取り得る値に関する成果を得た。具体的には、ある条件の下で特定の形をしたsingularity contentを持つ格子凸多角形が存在するための必要条件を求めた。この研究成果はDaniel Caveyとの共著論文としてまとめ、国際学術雑誌への掲載が決定した。 課題2について、エルハート多項式が一致する凸多面体のクラスの1つである「マーク付き半順序集合に付随する格子凸多面体」に対し、組合せ的変異同値であることを証明した。この対象は、旗多様体のNewton-Okounkov凸体であり、旗多様体のトーリック退化の理論において重要な役割を担う。表現論・代数幾何とも関連する重要な理論に対し、組合せ的変異を用いた新たな理論の構築の端緒となる結果である。この成果は共著論文としてまとめ、国際学術雑誌への掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り、マーク付き半順序集合に付随する格子凸多面体の組合せ的変異同値性は、表現論や代数幾何学において重要な研究テーマである「旗多様体のNewton-Okounkov凸体の構成」に関して組合せ的変異を用いた意味づけを与えることになる。これは、当初計画していた課題2の取り組みに関して大きな進展であるのみならず、本研究課題の他分野の課題への応用としての新たな研究の展開にも繋がる重要な研究成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
マーク付き半順序集合に付随する格子凸多面体(これらは旗多様体のNewton-Okounkov凸体の一種である)に対する組合せ的変異同値性が示せたので、他にも知られている旗多様体のNewton-Okounkov凸体に対して組合せ的変異同値性を示すことを目指す。旗多様体の任意のNewton-Okokunkov凸体同士が組合せ的変異同値であることが示せるか、その可能性について模索する。 さらに、課題1に関する研究も継続する。具体的には、3次元格子凸多面体に対して組合せ的変異不変量がないか、多様な計算実験を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大防止の影響から、国際会議が延期・国内学会も中止や延期が相次いだため。生じた次年度使用額は、延期された国際会議などの出張費として使用する予定である。
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