研究課題/領域番号 |
20K03528
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
秋山 茂樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60212445)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 自己誘導構造 / ディオファントス近似 / 置換規則 / タイリング / スツルム語 / Pisot 数 / Markoff Lagrange スペクトル |
研究実績の概要 |
金子元とともに Markoff-Lagrange スペクトルの乗法的な類似をPisot 数を底とする場合に研究した。この研究は特殊な記号力学系上に定まる関数の最適化問題に翻訳され、とくに禁止語が徐々に減り、初めて非周期無限語が生ずるような臨界点の研究が重要となる。この研究は数論の難問に属するが、設定が適切な場合には比較的扱いの容易なフルシフトに対応する。この数論と記号力学系の間をつなぐ公式が非常に重要な役割を果たす。 関連してスツルム語とバランス語が臨界点の記述に現れる。スツルム語は無理回転のコードとして現れる無限語で、複雑度最小の非周期無限語としても特徴づけられる。バランス語はスツルム語に現れる有限語であり、現れる文字の頻度変化最小の語とも定義できる。この間の研究により Markoff-Lagrange スペクトルの研究を通じてバランス語の数え上げと数論の関係も明らかになってきた。バランス語のパラメータの存在する区間を指定したときの長さの増大に関する漸近挙動もわかり、さらに Riemann 予想とのつながりも見えてきた。スツルム語は語の組み合わせ論で基本的であるが、このような数論的な文脈での研究は少ない。 B.Loridant, J.Thuswaldner との共同で連続整数digit でできるタイルの位相構造、とくに切断点の存在に関する特徴付けを行った。この研究は境界を記述するオートマトンの計算に帰着するが、位相的な考察が重要である。さらに永井、J.Y.Lee との共同研究では、自己相似タイル張りのパターンにたいして等差的な構造がいかに現れるかを組織的に研究した。自己相似タイル張りは置換規則力学系の高次元化の一つであり数論への応用が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Markoff-Lagrange スペクトルの研究は、指数オーダーの増大度の線形回帰数列の一般項の小数部分の問題であり数論の難問に属するが、記号力学系とのつながりが明確になって大きな進歩が得られた。この方向で金子、釜江との共同研究も進んでいる。さらにバランス語の数え上げ問題にも応用が見つかっている。
|
今後の研究の推進方策 |
金子、釜江らと Markoff-Lagrange スペクトルのより一般な代数的数を底とするような線形回帰数列を研究する。さらに多面体の射影の統計的振る舞いに数論的な対象が表れることも釜江との研究でその片鱗が見えてきているので、この方向をさらに追求する。
置換規則を少し緩める形の操作が今後の重要な研究課題となると考えるので、永井、S.Q.Zhang 等との共同研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナのパンデミック第6波の影響で研究発表と共同研究を行うためのいくつかの渡航が中止となった。今年度はパンデミックの収束にすこし先が見えてきたので韓国およびオーストリアでの共同研究を行いたい。
|