研究課題/領域番号 |
20K03529
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
津嶋 貴弘 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (70583912)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ガロワ表現 / 分岐 / Lubin--Tate空間 |
研究実績の概要 |
数論幾何の主対象の一つとしてガロワ表現がある。ガロワ表現と多様体の幾何的様相の関係を調べることは数論幾何学の目的の一つである。本研究課題では特に局所体上の代数多様体のエタールコホモロジーに現れるガロワ表現を調べることを目標にしている。代数多様体が良い還元を持たない場合には、そのガロワ表現は分岐する。その分岐具合と多様体の退化の具合との相関関係を調べることはとても興味深い。 当該年度においては、局所体上の代数多様体として超幾何曲線を考えてその開集合の良いモデルを調べることでコホモロジーをヒルベルト記号やガウス和を用いて具体的に記述するという研究を行った。ただ、条件や記述が現状かなり複雑であるので、もう少し綺麗に整理できないかを今後模索していく必要があると思っている。 またフルレベル構造を持つモジュラー曲線が標数3で悪い還元を持つ場合に、その安定還元がどうなるかは知られていない。この場合には超特異楕円曲線の自己同型群が大きくなるため、他の標数と違う現象が起きるはずである。レベルが低い場合にどのような現象が起きるかを模索した。これについて得られた結果は論文としてまとめ、論文発表する予定である。 Lubin--Tate空間のある種のaffinoidのコホモロジーに現れるガロワ表現の記述を以前行った。これに触発されて局所体上のガロワ表現の構成について研究を行った。任意の加法的多項式に対して, ある代数曲線のエタールコホモロジーを用いてガロワ表現を構成することができる. それに付随する幾つかの不変量の決定を行った. これについても論文作成を続けて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は当初予定になかったアイデアなどを得られた。それを実現するための計算などもできたことは有意義だった。これはサマースクールでモジュラー曲線について概説する機会があり、その過程でいろいろ文献を調べていて計算できるだろうということに気づいたことに起因する。この系統でもいろいろと調べる余地はありそうなので、今後も引き続き模索したい。 ただ、Lubin--Tate空間のaffinoidの研究をより進める必要があると思っている。以前発見した面白い還元のコホモロジーについてはまだ解析しきれていない部分が多い。そちらが少し止まっている点が「おおむね」の理由である。 また局所体上のガロワ表現の構成に関して論文作成が進んだことは有意義であった。この研究について当該年度に講演する機会があり、様々な研究者と質疑応答をする機会を持てた。研究発表の準備のために論文作成をかなり進めて、証明における不十分な議論などを改訂する作業を行った。 講演準備の過程で、今後の研究課題が浮き彫りになったこともとてもよいことだった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては構成したガロワ表現のイプシロン因子の計算を行うこと、構成したガロワ表現の原始性の必要十分条件を模索すること。(幾つかの十分条件は得ている)Bushnell--Henniartの最近のLanglands対応の観点からのガロワ表現のHerbrand関数による記述などとの関係を模索することも興味深い。これによりLanglands対応で対応する尖点表現をある程度特定できないかを模索したい。それらのクラスの尖点表現についてのJacquet--Langlands対応の明示的記述もできれば行いたい。 Lubin--Tate空間のaffinoidのコホモロジーの研究を引き続き進める。 この方向ではまだまだ明らかになっていない現象が多くあると考えている。上のガロワ表現の構成との整合性などを模索していくことも興味深いテーマである。上で構成したガロワ表現の構成とLubin--Tate空間の還元の様子を結びつけていくことが今後の大きな目標になると考えている。 上で述べた構成自体ももっと一般化する可能性もありうる。その方向でも模索していこうと思っている。 以上のように今後の課題は山積しているが、引き続き研究を進めたいと思っている。
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