金銅誠之との共同研究としてQuadratic line complexの構造を調べたが、その一環として通常アーベル曲面から構成されるKummer4次曲面がReye congruenceとして表されるかどうかを研究した。また、同氏との共同研究として発表した自己同型群が有限群になるCoble曲面がnodal曲線のconfigurationを用いて7種類に分類できることを示した論文が日本数学会の欧文誌から出版された。この50ページ余の論文で、nodal曲線のconfigurationをもつCoble曲面が存在すること、各類の有限自己同型の構造、モジュライ数、境界の既約成分の数も決定できており、この問題が完全解決に至ったと言える。全体の研究としては、高島克幸との共同研究で種数2の超特殊代数曲線のJacobianのRichelot isogenyの研究を行い、それらを用いて構成されるグラフの構造を明らかにした。これと関係して、単著で種数3の代数曲線のJacobianのRichelot isogenyが分解する条件を求め、Howe曲線との関係を解明した発表した。これらの研究はポスト量子計算機暗号の理論と関係している。斎藤夏雄との共同研究として、標数2で小平次元が1の準楕円曲面の多重線形系の構造を調べ、それが種数1の曲線のfiber space構造を与える条件を決定した。これは、一般標数で種数1の曲線のfiber spaceの構造決定に残されていた部分で、この解決でこの問題が完全解決したと言える。Schuettとの共同研究では、9個のカスプを持つK3曲面が位数3の自己同型を持つアーベル曲面を3次被覆にもつという結果を標数3を除く正標数で証明し、これと関連するアーベル曲面の構造を明らかにした。これは、複素数体上ではBarthによって示されていた結果の正標数への一般化になっている。
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