(1) 大域体(主に有理数体)の染川K群の構造の研究を行った。とくに大域体上定義された楕円曲線と乗法群に付随する染川K群ついて、p進体のような局所体での情報(これは以前のGazaki氏との共同研究によりだいぶ分かっている)から大域体の染川K群のねじれ部分群を調べようとした。Bloch 予想によるとこの群はtorsionとなる(つまりねじれ部分群が全体と一致する)でろう、と期待されている。本研究では、特定の楕円曲線に対してMordell-Weil群のねじれ点から、染川K群のねじれ点をいくつか具体的にみつけることはできた。 (2) p進数体の有限次拡大体上のいくつかの曲線の積からなる多様体に対して、この多様体に付随するAlbanese写像の核の構造について考察した。以前のGazaki氏との共同研究では、各曲線が楕円曲線の場合に基礎体がp進有理数体上不分岐(つまり絶対分岐指数が1)であれば、適当な仮定の下でこの Albanese 写像の核がp加除(p-divisible)であることを示した。今回は、楕円曲線とは限らない、より一般の曲線で各曲線が良通常還元(good ordinary reduction)を持つ場合を考え、さらに基礎体の絶対分岐指数が p-1 未満であっても、同様の結果が成り立つことが分かった。本研究に関しては論文を執筆し、学内紀要に投稿し出版されている。 (3) 群馬大学大下氏との共同研究により、有理数体上の楕円曲線のp冪ねじれ点のなす群から定まるイデアル類群の(ある商)の漸近挙動と精 Selmer 群の定める円分岩澤加群の関係に関する論文を執筆した。査読者とのやりとりによって論文に大幅な改定を行い、最終的に J. Theor. Nombres Bordeauxに受理された。
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