研究実績の概要 |
ヤコビアン予想について、正標数からのアプローチにより挑んだ。特に、n変数多項式環 k[y_1,...,y_n]から k[x_1,...,x_n] へのエタールなk代数準同型が与えられた時, 関数体の拡大 L=k(x_1,...,x_n)/K=k(y_1,...,y_n) を考え, L/K のガロア閉包を M とし, [M:K] が標数 p で割れないと仮定する. このとき, 新しい次数1の変数 s を用意して、次数付き環 B = k[s,sx_1,...,sx_n] を用意し、A= k(s,y_1,...,y_n)∩B を考えるとき, もし k(x_1,...,x_nA が split F-regular であることを証明することができた。このことがヤコビアン予想の解決に結びつくかどうかまでは分かっていないが、今後この A を調べることの重要性が明らかに出来たのではないかと考える。また、n=2 であるときに、ある種の変数変換を施した後に上記の構成をすると, A が有限生成環となる。Aの有限生成性は重要な問題であるが、最近、Tang たちによって、Split F-regular である正規な半群環は有限生成であることが示されており、関連が注目される。一般にAは一意分解整域であり、そのa不変量はBのそれと同じ -n-1 である。新しい変数 s を用意する代わりに、n個の変数を用意して、B'=k[s_1,...,s_n,s_1x_1,...,s_nx_n] を考え、A' = B' ∩ k(s_1,...,s_n,y_1,...,y_n) とすると、やはり A' も split F-regular である。この多変数化も重要であることが分かった。
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