まず本研究の成果として、論文 "Limiting mixed Hodge structures on the relative log de Rham cohomology groups of a projective semistable log smooth degenerationl" が2023年8月に Kyoto Journal of Mathematics に掲載されたことを記しておく。 2023年度当初は、2021・2022年度に引き続き「完全(exact)」という仮定を付けた上で、被約でない対数的スムース退化について研究をさらに進めた。2022年度の研究結果を受けて、基底変換によってセミステイブルな場合に帰着するという方法を、「標準的対数的点(standard log point)」上についてだけではなく、より高いランクの自由モノイド付き対数的点の場合へと一般化することを試み、この方法が、かなり上手く機能するであろうという見通しを得ることができた。 一方で、対数的スムース退化が被約でない場合、現れる「モノドロミー自己同型射」は、必ずしもべき単(unipotent)ではなく、一般には準べき単(quasi-unipotent)になり、混合ホッジ構造を得るには「べき単部分(unipotent part)」を考えることが自然でる。このことは上記基底変換の方法と(一見したところ)整合しない。従って、基底変換によって得られるであろう混合ホッジ構造と、この「べき単部分」上に得られるであろう混合ホッジ構造の関係を正しく理解することが必要であると考え、2023年度の後半はこの問題に取り組んだ。そのために Steenbrink や El Zein の古典的な結果を精査し、比較検討することから始めたが、残念ながら明確な結論を得るには至らなかった。
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