研究課題/領域番号 |
20K03546
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
川ノ上 帆 中部大学, 工学部, 准教授 (50467445)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 代数幾何学 / 特異点解消 / IFP |
研究実績の概要 |
本研究の主題は特異点解消--特に3次元多様体の埋め込み特異点解消--である.埋め込み特異点解消については2次元までは幾つかの証明が知られているが,3次元の場合は未だ特筆すべき結果は得られておらず,為にこの分野で最優先の課題と目されている.令和2年度の予定は, 2次元の埋め込み特異点解消の幾つかの証明を比較検討して3次元の場合に適用したときの定式化及び問題点を精査するというものであった.この予定に沿って2次元埋め込み特異点解消において鍵となる幾つかの定理や議論をピックアップし3次元の場合に適用できるよう定式化する作業を行なった.特にアビヤンカーの補題と呼ばれる定理は技術的ではあるが2次元の証明の核心の一つであると考えている.この定理の3次元における定式化はこれまで注目していたのとは異なる不変量(特定の変数に関する重複度)を示唆し,興味深い視点を与えていると考えられる.コロナ禍により十分な研究時間が取れなかったため,どのように3次元の場合に適用するかなどの肝心の細部を詰めるには至っていない.3次元の場合は2次元の場合と比べ状況設定がかなり複雑になることから,3次元の場合の定式化が現行のもので適切かどうかを見極めるにはこの先かなりの考察が必要であると考えている. 以上のように,コロナ禍により令和2年度は一定の進展はあったものの残念ながら部分的であり, 研究会での講演や論文の刊行といった目に見える形の実績は得ることができなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響で研究の推進が著しく阻害される事態となった. すなわち, 遠隔授業に対応するための準備に膨大な時間を割くことを余儀なくされ, 休日もなく睡眠時間も十分とれないという状態であったため,研究するための時間がほぼ喰い潰されてしまった. また多くの研究集会が中止になったため研究者間の交流も激減した. 特に6月にメキシコで予定されていたMark Spivakovsky氏の還暦記念研究会は特異点解消の専門家が多数集まる研究集会となる予定であったが, これが延期になり招待講演や情報収集の機会を失ったのは本研究にとって大きな打撃であった. また, 共同研究者の松木氏が5月半ばから8月半ばまで京都に滞在する予定であったがこれも中止となり, 集中して議論を進める機会を奪われたことも甚だ遺憾な事態であった. 以上が研究の進捗が遅れている理由である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度もどの程度コロナの影響があるか分からないので状況に応じて変更が必要であるが, 概ね次のような方策を考えている. 依然として授業準備の激化が重圧となっているが,何とか時間を捻出して前年度予定していた2次元の埋め込み特異点解消の証明の精査を通じて3次元の場合の問題点の解決法を模索する.まだ確定ではないが夏休みには共同研究者である松木氏が来日し京都大学に滞在予定であるので直接会って議論して研究の加速を図る.7月にCIRMで開催される研究集会にオンラインで参加,また10月に沖縄で開催される研究集会に主催者の一人として実際に参加するなどして研究情報の収集を図る.当初令和3-4年度の目標であった単項型不変量の確定に向けてある程度の手がかりを掴み,遅れを取り戻すことを今年度の目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究時間が著しく減少し,国内移動や海外渡航などを通じた研究者間の対面での交流がほぼ全て不可能になった.そのため予定していた研究集会への参加や研究者の招聘などが全て延期された結果,繰越金が発生した.繰り越された研究費はコロナ状況が落ち着き次第延期した様々な活動のために使用する予定である.
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