研究実績の概要 |
本研究の主題は正標数における特異点解消, 特に3次元多様体の埋め込み特異点解消である. 正標数における特異点解消の問題は, 標数零の場合に全ての次元で解決しているのとは対照的に, 非埋め込みの場合は3次元まで, 埋め込みの場合は2次元までしか解決していない。特に3次元埋め込みの場合は未だ特筆すべき結果は得られておらず,この分野で最優先の課題と目されている. 令和3年度の予定は, 前年度に引き続き2次元の場合の手法を拡張して3次元の場合の研究を推進することである。 前年度の研究も遅れており予定通りとはいかなかったが, 概ね上記の方針に沿って研究を行った。Abhyankarの補題の3次元版やそれを用いたアルゴリズムを検討中である。2次元の場合と同様の観点から解析を進めようとすると, 爆発の中心に任意性が現れる点や配置のバリエーションが大量になる点などが3次元の場合の困難として挙げられる。正標数の爆発に特有の現象であるMoh-Hauserの跳躍現象をどう制御するかも重要な問題である。我々は2次元の場合は跳躍現象によらず減少する指標を導入する方式と跳躍現象の漸近的な挙動を解析する方式の2通りの解決法を提示した。しかし, 3次元においてはまだいずれの方法でもこの部分を克服できていない。見通しが良くなるような新たな指標が見いだせないか現在模索中である。 昨年度のコロナ禍による遅れに続き, 今年度もコロナ対応により研究時間が圧迫された事情もあり, 3次元の場合のアルゴリズムについて肝心の細部を十分詰めるには至っていない. 上記の通り3次元の場合は2次元の場合と比べ状況設定がかなり複雑なので,まだ研究がまとまるには暫く時間が必要である. 以上のように,令和3年度は一定の進展はあったものの残念ながら部分的であった。また研究会での講演や論文の刊行といった目に見える形の実績はなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度もどの程度コロナの影響があるか分からないので状況に応じて変更が必要であるが, 概ね次のような方策を考えている. 依然としてコロナの影響で授業に関する業務は大変になっているが,何とか時間を捻出して3次元埋め込み特異点解消の研究を推進する. 令和4年度は5月から8月まで共同研究者である松木謙二氏が来日し京都大学に滞在予定であるので, 直接会って議論して研究の加速を図る. コロナ他の問題が落ち着いて渡欧が可能になれば, ウィーン大学のHauser氏を訪問して議論をする。このような正常な研究活動の時間をできるだけ確保して遅れを取り戻すことを今年度の目標とする.
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