研究課題/領域番号 |
20K03549
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
吉澤 毅 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 准教授 (00636194)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セール部分圏 / ねじれ理論 / 局所コホモロジー加群 |
研究実績の概要 |
令和2年度は下記の研究成果を得た。(1)-(3)および(4)の結果は、2編の論文として学術論文雑誌に投稿中である(備考欄参照)。 セール部分圏で連結されたねじれ対(以下、連結ねじれ対)に関する成果として、(1)環のスペクトラムにおける特殊化で閉じた部分集合を用いて連結ねじれ対を実現できる条件を、局所部分圏を用いて特徴づけた。この特徴づけは、1962年のGabrielによる局所部分圏および遺伝的ねじれ対の特徴づけを拡張させたものであり、部分圏の分類問題に対して連結ねじれ対を用いるという新たな方向性を見出した。(2)「通常の遺伝的ねじれ対は、部分圏のサポートを用いてすべて記述できる」という分類定理の拡張として、部分圏のサポートを用いて実現可能な遺伝的連結ねじれ対を分類した。特に、Gabrielの方法で復元可能な連結ねじれ対は、ねじれ部分に局所部分圏を持つ場合のみであることを示した。この事実は、連結ねじれ対が局所部分圏よりも多くの部分圏を分類する可能性を示唆している。(3)拡大部分圏を用いてセール部分圏の具体例の構成法を与え、研究目的であるセール部分圏の構造解析に対して、新たな知見を与えた。2012年の申請者による「2つのセール部分圏の拡大部分圏を用いた構成法」には、片方のセール部分圏に対する安定性の条件が必要であった。今回の構成法にはセール部分圏自身の安定性は不要である点が、既存のものとの違いである。 一方、部分圏の分類を局所コホモロジー論に応用するという研究目的に関して、2015年のDao-高橋によるdominantな分解部分圏の分類定理を応用して、次の結果を得た。(4)有限次元Cohen-Macaulay環において、イデアルの選び方に依存しない局所コホモロジー加群のannihilatorの存在性をCohen-Macaulay次元を用いて特徴づけ、新たな消滅定理を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環のスペクトラムにおける特殊化で閉じた部分集合によって実現が可能である連結ねじれ対の特徴づけを与えたことにより、通常のねじれ対との違い(特に、連結ねじれ部分が拡大加群を取ることに閉じる必要がないこと)が生じる理由を明確にできたことは大きな前進である。 一方、部分圏の分類に関する結果を局所コホモロジー論へ応用することは、本研究の目的のひとつである。Cohen-Macaulay次元を用いた局所コホモロジー加群の消滅に関する結果を得られたことは、研究方針の正当性を裏付ける根拠を与えたという意味でも大きな成果といえる。 以上の研究成果を踏まえ、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究によって、連結ねじれ対を実現できる特殊化で閉じた部分集合に関する必要条件・上限・下限を与えられた。さらに、この部分集合の構造が連結ねじれ対により一意的に定まらないことも判明した。しかしながら、上記の部分集合が遺伝的ねじれ対を実現できるための十分条件およびその具体的な構造は未解明であるため、引き続き研究を推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時における科研費の主な使用目的は、学会等において研究発表を行うための旅費であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により多くの研究集会が中止またはオンライン開催に変更されたため、当初に予定していた通りの使用には至らなかった。 次年度も同じような状況が予想されるため、オンラインでの発表が行えるようにするための機材調達に関する物品費や、参考文献に関する複写費、および図書購入費などにも使用する予定である。
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備考 |
[1] Takeshi Yoshizawa, The realization problem for generalized torsion theories, 投稿中. [2] Takeshi Yoshizawa, Annihilators of local cohomology modules over a Cohen-Macaulay ring, 投稿中.
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