最終年度(令和5年度)における研究実績は以下の通りである。 (1) 研究代表者の指導学生の吉田裕一氏(北見工業大学・令和5年度3月修了)との共同研究において、「3種のマッチング数が特定の値を持つグラフの辺数の最小値を求めよ」という問題に取り組み、誘導マッチング数と最小マッチング数が等しい場合、および誘導マッチング数・最小マッチング数・マッチング数が全て等しい場合において最小値を決定した。また、最小値をとるグラフのエッジイデアルの環論的性質について調べた。結果をまとめた論文を準備中である。 (2) 一昨年度から開始した、グラフのマッチングに関する一連の研究のCoqによる形式化を進めた。才川隆文氏(名古屋大学)と研究代表者の指導学生の辻陽介氏(北見工業大学)との共同研究である。誘導マッチング数・最小マッチング数・マッチング数の間に成り立つ基本的な不等式の形式化が完了し、独立集合および独立数についての形式化についても一定の成果を得た。 (3) 連結単純グラフに付随するエッジイデアルの剰余環の余次元の下限値および上限値を得た。応用として、Cohen-Macaulay グラフおよび Gorenstein グラフの頂点数の上限値を、対応するグラフの最小マッチング数を用いて与えた。また、「余次元=マッチング数の2倍」が成り立つ連結単純グラフを分類し、そのようなグラフのエッジイデアルは常に Cohen-Macaulay となることを示した。得られた結果をまとめた論文を執筆中である。 4年間の研究期間を通じて、共同研究してくださった方々のお陰で、エッジイデアルの環論的不変量(次元・深度・Castelnuovo-Mumford正則度・h多項式の次数)と、対応するグラフのグラフ理論的不変量(誘導マッチング数・最小マッチング数・マッチング数・辺数・頂点数・独立数)との相互関係を色々と見出すことができた。
|