研究課題/領域番号 |
20K03551
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 太初 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50466546)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アソシエーションスキーム / 距離正則グラフ / Terwilliger 代数 / グラフのスペクトル / 量子中心極限定理 |
研究実績の概要 |
1. 私の学生の Tao Wang 氏と共同で、2005年に発見された非常に特異な距離正則グラフである「捻れ Grassmann グラフ」の Terwilliger 代数の表現の研究を、「thin」と呼ばれる場合について前課題から引き続き行い、既約加群を分類・記述することに成功した。捻れ Grassmann グラフは、Terwilliger 代数が「基点」の選び方に依り thin と non-thin のいずれも取り得る、知られている初めての無限系列であり、一方について構造を決定できたことの意義は大きい。この成果に関する共著論文は本年度中に出版された。
2. K. N. Toosi 工科大学の Masoumeh Koohestani 氏及び尾畑伸明氏と共同で、「古典的パラメータ」を持つ距離正則グラフに対する量子中心極限定理の研究をやはり前課題から継続して行い、可能な極限を古典的パラメータの挙動によって記述した。さらに、これらのグラフの正規化したスペクトル分布の弱収束極限を求めた。既知の距離正則グラフの (直径が発散する) 無限系列は全て古典的パラメータを持つか、或いはそのようなものと密接に関連しており、本研究により感覚的には大部分の距離正則グラフをカバーしたことになる。この成果をまとめた共著論文は本稿執筆時点でほぼ完成しており、近日中に公開する予定である。
3. Tao Wang 氏、及び安徽大学の Xiaoye Liang 氏・安徽建築大学の Ying-Ying Tan 氏と共同で、アソシエーションスキームの「scaffolds」に関する研究を行った。特に、scaffolds に関するある命題が真ならば、それを「双対 scaffolds」に置き換えても真であろうという Martin の予想を、状況を制限して証明することを目指している。次年度も継続して取り組む計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中に国際会議での招待講演2件や招待制の国際研究集会への参加を1件等、いくつかの出張を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で全て延期となった。研究の遂行への影響は少なからずあったが、オンラインの種々のツールを駆使することで共同研究を進めることができた。特に、捻じれ Grassmann グラフの Terwilliger 代数の表現論や、古典的パラメータを持つ距離正則グラフに対する量子中心極限定理について、想定していた成果を無事あげることができたことは、満足できる進展だと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も新型コロナウイルスの影響は継続すると思われるが、本年度中に培ったノウハウを活かして海外の共同研究者との研究をさらに活発化させたい。また、オンラインの研究集会や研究セミナーに参加するだけでなく、自らも企画することで、情報交換の機会を積極的に確保したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では元々旅費が使途予定の大部分を占めており、新型コロナウイルスの影響で海外・国内を含め出張が全てなくなったことに依る。状況が十分改善すれば徐々に出張を再開したい。
|