研究課題/領域番号 |
20K03551
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 太初 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50466546)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アソシエーションスキーム / 距離正則グラフ / 量子ウォーク / 量子探索アルゴリズム / 強正則グラフ |
研究実績の概要 |
1. 私の学生の Mohamed Sabri 氏及び LNCC (ブラジル)の Renato Portugal 氏・Pedro Lugao 氏と共同で、量子ウォークに基づくグラフ上の探索アルゴリズムの研究を行った。本年度は距離正則グラフの重要な例である Johnson グラフを考察し、連続時間・離散時間のいずれも古典的アルゴリズムの2乗高速化を実現することを数学的に厳密に証明することに成功した。連続時間の場合を取り扱った共著論文は本年度中に出版された。これらでは1頂点の探索を議論したが、別の手法を導入してさらに2頂点の探索についても連続時間の場合に同様の成果を得た。現在2編の共著論文を投稿中である。
2. Martin はアソシエーションスキームの「scaffolds」の研究を行い、scaffolds に関するある命題が真ならば、それを「双対 scaffolds」に置き換えても真であろうと予想した。私の学生の Tao Wang 氏、及び安徽大学の Xiaoye Liang 氏・安徽建築大学の Ying-Ying Tan 氏と共同で、頂点集合上に正則に働く可換な自己同型群を持つ場合に Martin の予想を証明した。この成果に関する共著論文は本年度中に出版された。
3. 工学にも応用を持つ「実 equiangular tight frames (ETFs)」の既存の例は強正則グラフの埋め込みから構成されるものが多いが、坂内英一氏・悦子氏、上海理工大学の Yan Zhu 氏、及び国立中央大学(台湾)の Wei-Hsuan Yu 氏・Chin-Yen Lee 氏と共同で、自己同型群がランク3に働く強正則グラフから得られる実 ETFs を全て分類した。この研究は群論的・表現論的観点から行ったものであり、成果をまとめた共著論文を現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中に国際研究集会での招待講演を2件オンラインで行った。新型コロナウイルスのため、出張件数は昨年度に引き続き0となった。一方、LNCC の Renato Portugal 氏・Pedro Lugao 氏との共同研究はビデオ会議ツールを活用して行った(時差12時間)。出張が制限された中でも、計画していた量子探索アルゴリズムの研究を実行し、順調に成果をあげることができたのは重要な進展である。
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今後の研究の推進方策 |
Portugal 氏は物理学者であるが、工学系の研究者との情報交換も現在行っており、これらを継続することで異分野協働をさらに推し進めたい。また、海外の研究者との協同研究をさらにもう1件計画している。また、本年度中にグラフのスペクトルに関する研究集会を1件オンラインで開催したが、来年度も同様に企画し、研究交流の場を増やしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では元々旅費が使途予定の大部分を占めており、新型コロナウイルスの影響で海外・国内を含め出張が全てなくなったことに依る。状況が十分改善すれば徐々に出張を再開したい。
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