研究実績の概要 |
箙Hecke代数の有限次元加群圏から, 量子アフィン代数の有限次元加群圏への関手を構成する, 一般化量子アフィンSchur-Weyl双対性の理論を用いて, 量子アフィン代数の有限次元表現に関する研究を行った。 Kirillov-Reshetikhin加群は基本加群の適切なテンソル積の既約商として構成される。この基本加群を拡張する概念として, Kashiwara-Kim-Oh-Parkは双対データと呼ばれる既約加群の族を定義し, これらが基本加群の場合同様, Poincare-Birkhov-Witt性などの重要な性質を満たすことを示した。するとこの双対データに対して, Kirillov-Reshetikhin加群に当たる加群がどのような性質を持つか, という問題が自然に生じる。実際Kashiwara-Kim-Oh-Parkにより, 双対データから得られる「一般化Kirillov-Reshetikhin加群」と呼ぶべき加群たちが, 元のKirillov-Reshetikhink加群と同様, T系と呼ばれる短完全列を満たすことが示されている。 本年度はこれらの研究に触発されて, 双対データから得られる一般化Kirillov-Reshetikhin加群, あるいはそのさらに拡張である, 一般化蛇加群について研究を行った。その結果, Mukhin-Youngによる「蛇加群が拡大T系を満たす」という結果を, 双対データから得られるもともとの蛇加群と同様の形で定義される「一般化蛇加群」へ, 拡張することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年箙Hecke代数や団代数など数学の他分野との関わりが見つかる中で, 量子アフィン代数の有限次元表現論では多くの重要な発見がいくつもなされており, 本研究もこれらの仕事から多くの影響を受けている。今年度の双対データを用いた研究もその一つであり, 研究開始当初は想定していなかった形で, Kirillov-Reshetikhin加群, あるいはその亜種に関する, 新しい側面を探る興味深い研究であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き一般化量子アフィンSchur-Weyl双対性を用いて, 量子アフィン代数の有限次元加群圏に関する研究を行っていく。特に団代数との関係について, 興味を持っている。今年度の拡大T系と団代数には, 何らかの関係があると期待されるが, 現状詳しくはわかっていない。これらを解き明かすことも今後の課題としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の流行により, 国内・海外出張の機会が想定より少なくなったため, 次年度使用額が生じた。感染症の分類が5類となったこともあり, 国内・海外出張の機会は増加していくと思われる。そこで, ここ3年ほど他の研究者との対面での研究交流が乏しかったことも踏まえ, 積極的に旅費として使用していきたいと考えている。また書籍の購入にも充てていきたい。
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