研究課題/領域番号 |
20K03558
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石川 雅雄 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40243373)
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研究分担者 |
岡田 聡一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20224016)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 代数的組合せ論 / 直交多項式 / パフィアン / 行列式 / 交代符号行列 / 半順序集合 / Fully packed loops / Selberg Integral |
研究実績の概要 |
2020 年はコロナの影響で当初予定した国内および海外への出張ができなかった。国内の研究会は Zoom 等によるオンライン研究会になり、研究発表はできたが情報交換等の交流が不十分であることは否めない。幸いにして 2019 年の秋に Jiang Zeng 氏が来日して岡山大学に1ヶ月ほど滞在し共同研究をすることができた。2020 年になってからオンライン授業等の合間に共著論文の執筆を進め、Hankel hyperpfaffian calculations and Selberg integrals を完成させた。De Bruijn の公式を使うとある種の hyperpfaffian の計算がセルバーグ積分やそのいろいろな変種に帰着する。これらを応用するとパフィアンや hyperpfaffian に関する新しい等式が沢山得られる。また Al-Salam-Carlitz 直交多項式のモーメントを使ったパフィアンに関して Baker-Forrester の多変数直交多項式の結果を使うことによって、我々の先の論文で述べた予想を証明できた。この他に Gessel-Xin 型のハンケル行列式に現れる成分について同様の形のパフィアンを計算することによって綺麗な形の予想ができる。この予想について Associated Jacobi polynomials と密接な関連があることを発見した。この行列式の計算についてはリヨン大学の Jiang Zeng 氏や Theresia Eisenkolbl 氏と共に研究を進めている。また、残された課題は、これらのパフィアンの数え上げ問題への応用である。交代符号行列や平面分割の数え上げ問題に関係する数え上げ問題に応用できれば理想的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リヨン大学の Jiang Zeng 氏や Theresia Eisenkolbl 氏と共同研究をする予定だったが 1 年以上渡航できていない。その後も電子メール等による連絡は取っているが、メールで行える共同研究は限界がある。Associated Jacobi polynomials のモーメントについて Wimp により重み関数が具体的に与えられているので、これを利用した計算を共に行ってきた。モーメントの母関数の連分数展開を利用して具体的に重み関数のパラメータを決定するところまでは共同研究で得られたが、この重み関数を利用して多変数超幾何の計算を行うことは、なかなか難しい。Jack 多項式等の対称関数が関係していることも考えられ、いろいろと興味ある問題を含んでいる。Associated Jacobi polynomials の重み関数は一般には具体的に計算することが難しく Gessel-Xin 型のパフィアンの場合に何故綺麗な形になるのかも不思議である。また、ここに現れるパフィアンの成分の母関数は Totally symmetric self-complementary plane partition の数え上げに現れるパファインの母関数に酷似している。しかし、今のところ、この形のパフィアンを使って、これらの対称性を持つ平面分割の母関数を計算する方法が見つからない。Gessel-Xin は、この種の行列式を母関数を使ってハンケル行列式に帰着させたので、パフィアンの場合も面白い問題である。また、パラメータを入れた数え上げ問題もあり、この種のハンケル型パフィアンが、直接、数え上げ問題に役立つことが期待される。この観点からの研究をされに進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2021 年はフランスのリヨン大学で共同研究を行う予定である。2021 年夏頃にパンデミックに改善が見られ、海外出張が出来るようになることを期待している。2021 年の研究計画はリヨン大学の Jiang Zeng 氏とも打ち合わせていて、リヨン大学へ滞在しての研究を計画している。リヨン大学では、主に Wimp や Ismail-Masson の結果を使った Associated Jacobi polynomials の重み関数の計算を進める計画である。また、もう1つのテーマであった分配束としての構造の研究も進める。例えば、交代符号行列全体の成す束は A 型の root poset を貼り合わせた半順序集合のイデアル全体と一致することは Striker によって示された。 180°回転不変な交代符号行列全体の成す束の構造も B 型の root poset を使って同様に記述できる。線対称交代符号行列全体やその他のいろいろな対称性を持つ交代符号行列についても調べる価値がある。さらに Razumov-Stroganov 予想については Cantini-Sportiello によって解決したが、Jan de Gier の論文には4つの予想が書いてある。180°回転不変な交代符号行列に対応する FPL の場合は Cantini-Sportiello による論文があるが線対称交代符号行列に対応する FPL の場合と上下かつ左右対称な交代符号行列に対応する FPL の場合については結果が得られていない。この線対称交代符号行列に対応する FPL の場合にも2つの場合があって、普通の線対称交代符号行列に対応する場合と defect がある nearly perfect matching の場合がある。これらの問題に挑戦したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによるパンデミックのために予定をしていた海外出張ができなかった。2021 年にコロナの状況が落ち着けばフランスのリヨン大学を訪問し、共同研究を行うように相手方と打ち合わせている。また CNRS のお金で滞在する招待を受けている。この他にもコロナが収束した後には Formal Power Series and Algebraic Combinatorics や Seminaire Lotharingien de Combinatoire 等の以前から出席していた国際学会に参加したいと考えている。2020 年度は旅費が使えなかったので、ノートパソコン等の研究に必要な機材を買い揃えた。再び研究集会が開催される状況になれば、現在はオンラインで開かれている研究集会などに出張して内外の研究者と交流するために、パソコン等の研究に必要な金額以外は繰り越すことにした。数学においては実際に会って討論することは研究に対する刺激として非常に重要である。まだ、2021 年以降の対面での海外での研究集会は未定であるが、繰り越した分は 2021 年、2022 年の研究集会への出張や人を招くのに使う予定である。
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