研究課題/領域番号 |
20K03561
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
徳永 浩雄 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30211395)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超楕円曲線 / Mumford表現 / 楕円曲面 / Zariski pair |
研究実績の概要 |
2021年度は,2020年度に引き続き,超楕円曲線,楕円曲線上の因子の表現とそれを用いた研究を行った. (1) 2020年度に執筆した3本の論文のうち2本(Representations of divisors on hyperelliptic curves and plane curves with quasi-toric relations(高橋亜衣と共著タイトルを変更), Trisections on Certain Rational Elliptic Surfaces and Families of Zariski Pairs Degenerating to the same Conic-line Arrangement(坂内真三,川名のん,舛谷良祐と共著))について改訂を行い,共に掲載決定となった(前者は,Commentarii Mathematici Universitatis Sancti Pauli,後者はGeometriae Dedicata).特に後者は電子版がすでにwebにupされた. (2)共同研究者の坂内真三,白根竹人と共に, Conic-line arrangementに関するZariski pairの族でその極限に現れる曲線が同じ曲線となるような新たな例を得た.これらは現在論文として執筆中である.また,ここで得られた例の計算を通して過去に得られて例についた新たな解釈を得た. (3)(2)の成果について二つの国際研究集会で発表した.一件は制限された対面形式ではあったが京都大学数理解析研究所において行った.後者は,日越の国際集会(オンライン)である. (4) これまでの成果は全てramified typeと呼ばれる超楕円曲線に関する結果を応用して得られたものである.一方,幾何学への応用を考える際には,split typeと呼ばれる超楕円曲線を扱うのが自然である.そこで2021年度はsplit typeに考察を開始した. 幾何学の応用面を考慮すると2020年度終了時においては計画したtrigonal曲線よりもsplit typeの超楕円曲線がより有望と考えれるため,まずこちらを優先した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に引き続き,2021年度も新型コロナ感染症の影響により,研究発表や協力を仰いだ研究者を訪問しての情報収集や討論は大きな制限を受けた.とりわけ,夏休みを含む9月下旬まで,県境を超えて共同研究者を訪れることができなかったことは,Conic-line arrangementの埋め込み位相の研究の推進には影響があった. ただし,10月以降は,共同研究者を訪問することが可能になり,セミナーなどを通して討論ができたこと,2020年度に執筆した論文が2件受理されたことは,本課題の大きな進展である.また,二件の口頭発表のうち一件は参加者が限られていたが,対面で行うことができたことも大きかった.したがって,2021年度当初の計画はある程度以上のレベルで達成されたと考えられる.しかし,残念ながら,12月以降は勤務先での公務が多忙になったことに加え,コロナ感染症が再び流行したため,思うような研究連絡ができず論文の執筆などが停滞気味にならざるを得なかった.こうした状況を鑑み,達成度は概ね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,1. 2021年度と同様,研究成果の発表(共同研究者によるものも含む)をより積極的に行う. 2. 2021年度中に得られた成果(Conic-line arrangementに関するもの)について共同研究者と共に論文の執筆を進める. 3. これまでの研究対象は,ramified type と呼ばれる超楕円曲線であった.幾何学へのさらなる応用を睨んでsplit typeと呼ばれるものに対しても,因子の表現やそれを用いたヤコビアン上の演算に関して基礎的な研究を行う.このテーマは次のステップへ向けた「準備」にあたっており,有効な手法が開発できれば,射影平面や有理線織面の二次被覆に関する数論的な研究の具体的な行う際は強力な道具となることが期待されている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の流行のため,国内・国外への出張や,海外の共同研究者の招聘などの旅費の使用がほぼゼロに近かったことが理由である.2022年度は状態が少しは良くなることが見込まれるので,対面のセミナーを中心とした研究を推進したい.
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