研究実績の概要 |
今年度は, 主要課題の「2. Castelnuovo(トーリック)多様体と多面体の関係性の究明」に関して以下の研究を行った. (1)偏極トーリック多様体の断面種数の下限について. 昨年度末に得た下限の式をさらに改良し, 一般次元に適用できるよりきれいな形にまとめ論文の執筆を進めた. まだ完成には至っていないが, 9月に行われた日本数学会の秋季総合分科会でこの結果を発表した. 講演後は「断面種数がこの下限に一致する偏極多様体はどのようなものか?」との質問があった. この問題は筆者も取り組む必要があると考えていたので, 今後の研究課題としたい. (2)hベクトルの交代和の非負性について. 非特異な3次元凸多面体の場合に2015年の論文で得られた交代和の性質の4次元への拡張に取り組んだ. その結果, 非特異な4次元の場合は交代和が0となる場合がなさそうなことが分かってきた. これは非特異という条件が強すぎることを意味しており, もう少し弱い条件でも交代和の非負性が成り立つことを示唆している. したがって現在は, どのような条件が最も良いかを模索している段階である. (3)Castelnuovo多面体(下限体積を持つ凸多面体)の分類について. すべての場合を扱うのは難しいのでまずは考えやすいグループから始めたいと思っていたところ, 日比氏から「4次元以上で非特異なCastelnuovo多面体は存在しないのではないか?」との連絡があった. そこで, まずはこの予想の証明に取り組んでいるところである. 論文の形にこそなっていないものの, いずれの研究も方向性は定まっており, 新しい成果に向けて着実に進行中であると言える.
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