研究実績の概要 |
今年度に行った研究は以下の通りである. (1) 非被約な楕円ルート系に関する研究,(2) 楕円ルート系に付随するリー代数の研究 (1)について:昨年度から引き続き行った研究テーマである.昨年度までの研究で, (i)非被約な楕円ルート系の分類, (ii)楕円図形による分類結果の視覚化, 及び各ルート系の構造をより明確化, の2点に成功していたが,本年度はこれらに加えて, (iii)各ルート系の自己同型群の決定, (iv)対応するワイル群の構造の決定(楕円図形に付随する生成元と基本関係式の導出)を行った.今年度の研究により,非被約な楕円ルート系を調べるための基本的なデータは,ほぼ出そろったと考えている.また,本テーマに関する研究成果を国内外の研究集会(国内3件,海外1件)で発表した. (2)について:楕円ルート系に付随するリー代数としては, トロイダルリー代数が知られている. これは半単純リー代数に2変数のローラン多項式環をテンソルして, その普遍中心拡大として得られるリー代数で,本課題の主要テーマである量子トロイダル代数の古典極限にもなっている. ただし,トロイダルリー代数と関連するのは一部の楕円ルート系だけであり,『一般の楕円ルート系に付随するリー代数とは何か?』という問いに解答を与えることは,これまでは出来ていなかった.今年度はこの課題に取り組み,(i)アフィンリー代数の場合によく知られた『ねじれ構成』を楕円ルート系に拡張することで,全ての楕円ルート系に付随するリー代数を構成し,(ii)構成されたリー代数の一部に対しては,楕円図形に基づく生成元と基本関係式による表示を得た.特に, (ii)の生成元と基本関係式による表示は,構成されたリー代数の量子化(一般量子トロイダル代数)を構成する上で,基本的な結果であると考えている.
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