研究課題/領域番号 |
20K03569
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
村瀬 篤 京都産業大学, 理学部, 教授 (40157772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保型形式 / テータリフト / 保型L関数 |
研究実績の概要 |
Shintaniは、1970年代に、Shimuraリフト(半整数ウェイトの保型形式から整数ウェイトの保型形式を構成する)の随伴写像として、Shintaniリフト(整数ウェイトの保型形式から半整数ウェイトの保型形式を構成する)を導入した。1980年代に、Gross-Kohnen-Zagierは、Shintaniリフトの構成について精密化を行い、各負の基本判別式Dに対して、D番Shinitaniリフト(整数ウェイトの保型形式からヤコビ形式を構成する)を導入した。この構成は古典的な定式化であった。本研究の研究目的は、D番Shintaniリフトで与えられるヤコビ形式を上半平面に制限したものの研究であるが、そのためには、D番Shintaniリフトをアデール的に構成しておくことが望ましい。2021年度の本研究では、D=-4のときに、D番Shinitaniリフトをアデール的に考察し、構成に成功した。ポイントは、ヴェイユ表現の表現空間において適切な試験関数を定義し、それを用いてテータ核を構成することにある。さらに、二重化の手法、およびジーゲル-ヴェイユ公式を用いることにより、D=-4のときにD番Shinitaniリフトのピーターソン内積を計算し、それが整数ウェイトの保型形式のL関数の特殊値で表されることを証明した。また、Gross-Kohnen-Zagierの結果から、別の方法でD番Shinitaniリフトのピーターソン内積が計算できることを示し、二重化の手法およびジーゲル-ヴェイユ公式を用いた結果の検証を行った。 また、本研究の構想時には想定していなかったことであるが、ShimuraリフトとShintaniリフトの合成を考察するという新たな課題を着想することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究目的は、D番Shintaniリフトで与えられるヤコビ形式を上半平面に制限したものの研究であるが、研究の遂行に必須と思われるD番Shintaniリフトのアデール的構成をD=-4の場合に行うことができた。また、D=-4の場合のD番Shintaniリフトのピーターソン内積の公式を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、一般のDの場合のD番Shintaniリフトのアデール的構成、またD番Shintaniリフトで与えられるヤコビ形式を上半平面に制限したものの研究を行う計画である。また、ShimuraリフトとShintaniリフトの合成についても考察を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍により、参加を予定していた国内外での研究集会が中止またはオンライン化されたため、旅費をほとんど使わなかったため、次年度使用額が生じた。2022年度は、新型コロナの状況を見極めつつ、研究打ち合わせのための出張を活発化させていく計画である。
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