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2023 年度 実施状況報告書

種々の細層複体の相対コホモロジー論とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 20K03572
研究機関北海道大学

研究代表者

諏訪 立雄  北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (40109418)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード幾何学 / 複素解析幾何学 / 細層複体 / 相対コホモロジー / 特性類の局所化 / 留数 / 佐藤超関数 / 特異多様体
研究実績の概要

本研究の目的は, de Rham, Dolbeault, Bott-Chern 等の細層複体の相対コホモロジーを用いて特性類の局所化を調べ, さらに局所双対性により得られる留数を明示的に求め, その応用を図ること, また佐藤超関数を相対 Dolbeault コホモロジー表示により研究し, 解析学・複素解析幾何学への応用を目指すことである. 2023 年度は前年度に引き続き COVID-19 の影響で研究打合せ等に制約を受けた. そのため, 今までに築いた理論を再整備し, 将来のさらなる発展にも力を注いだ.
1. 関数の概念を拡張するものとして佐藤超関数があり, これは特に微分方程式論に画期的発展をもたらした. これは正則関数の層を係数とする局所コホモロ ジーを用いて定義され, 理論は導来函手の言葉で展開される. 実際に用いるには具体的に表す必要がある. 本研究代表者諏訪は相対 Dolbeault コホモロジーによる表現が有効であることを見出し, この立場からの超関数論を本多尚文, 伊澤 毅と展開した. 今までの成果を精査, 整備し共著論文として完成させ発表した.
2. 上記のような相対コホモロジーによる表現理論の一般化として, 層係数相対コホモロジーの軟層分解による表現理論を展開し, 導来関手の理論との関係も明らかにした. さらにこれを層の射のコホモロジーの細層分解による表現理論に拡張し, 論文として発表した.
3. 研究代表者は自身の展開する特性類の局所化理論に基づく複素解析幾何学の本の執筆を数年前に依頼され書き進めていた. 特異多様体上の整型関数・因子, 局所化された解析的交叉理論, Riemann-Roch の定理等につき詳細な考察を行い, 完成させ出版された. これは複素解析幾何学および関連分野における基本的な書物となることが期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究代表者が推し進める局所化理論が発展し, さまざまな方面での応用が見出されている. Hodge 構造の blowing-up での挙動に関する研究への応用等の他, 当初予期されなかったこととして, 佐藤超関数およびそれに関連した演算, 局所双対性等が相対 Dolbeault コホモロジー論を用いると簡明かつ明示的に表せる ことが分かり, 超関数論の新たな展開を見た. これにおいても, 以前より多方面で有効に用いられていた相対 de Rham コホモロジーにおける Thom 類が重要な 役割を果たす. またこの Thom 類と相対 Dolbeault コホモロジー での解析的 Thom 類との比較は複素多様体の Hodge 構造の研究に新たな見地をもたらすこと が期待される. さらに相対 Bott-Chern コホモロジーで Thom 類を考えることが出来, これはより精密な情報を含む.

長年にわたり書き進めていた特性類の局所化理論に基づく複素解析幾何学の書物が完成し出版された.

今後の研究の推進方策

今年度までの研究を継続し, その発展としてつぎのような課題につき研究を行う.
1. 相対 de Rham, 相対 Dolbeault コホモロジーを用いた Hodge 構造の研究を継続する. 特に相対 Dolbeault コホモロジーにおけるファイバー積分の改良の着想を得ているので, これを追求し Hodge 構造の blowing-up での挙動に関するイタリアの共同研究者達とのこれまでの結果をより良いものとする.
2. 相対 Bott-Chern コホモロジー論においても, ベクトル束の切断の族による局所化理論を展開する. 特に Thom 類を定め, 埋め込みに対する Riemann-Roch の定理を相対 Bott-Chern コホモロジーに局所化された形で示し, その応用を図る.
3. 相対 Dolbeault コホモロジーによる超関数, マイクロ関数の表示を用いてこれらの関数の理解をさらに深め, 解析学・複素解析幾何学等への応用を図る.
4. 複素多様体に対しては Deligne コホモロジーが定められ, その上の正則ベクトル束には Chern 類がこのコホモロジーに定められる. さらに複素解析的葉層 構造に対しては, Bott 型消滅定理が成り立つことが知られている. 相対 Deligne コホモロジーの理論を構築し, 特性類の局所化, 付随した留数の解明を試みる.

次年度使用額が生じた理由

(理由) 計画していた研究協力者との研究打合せ, 研究発表のための旅行につき, COVID-19 の世界的流行の影響が残り, 国外分は全く, 国内分もほとんど実施出来なかった.

(使用計画) 当該研究課題に関わる研究協力者との研究打合せおよび研究発表のための旅費として, また当該研究課題の遂行に必要なコンピュータ機器,・図書,・文具の購入に 用いる.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] パルマ大学/フィレンツェ大学(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      パルマ大学/フィレンツェ大学
  • [国際共同研究] リュミニ数学研究所(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      リュミニ数学研究所
  • [国際共同研究] ミナスジェライス大学(ブラジル)

    • 国名
      ブラジル
    • 外国機関名
      ミナスジェライス大学
  • [雑誌論文] Sato hyperfunctions via relative Dolbeault cohomology2023

    • 著者名/発表者名
      Naofumi Honda, Takeshi Izawa and Tatsuo Suwa
    • 雑誌名

      Journal of the Mathematical Society of Japan

      巻: 75 ページ: 229-290

    • DOI

      10.2969/jmsj/87668766

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Representation of relative sheaf cohomology2023

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Suwa
    • 雑誌名

      Forum Mathematicum

      巻: 35 ページ: 1047-1076

    • DOI

      10.1515/forum-2022-0258

    • 査読あり
  • [学会発表] Relative Bott-Chern cohomology2023

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Suwa
    • 学会等名
      Silver workshop VI, OIST (online)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Complex Analytic Geometry - From the Localization Viewpoint2024

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Suwa
    • 総ページ数
      608
    • 出版者
      World Scientific
    • ISBN
      978-981-4374-70-5

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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