研究課題/領域番号 |
20K03577
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川村 一宏 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40204771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バナッハ環 / C*環のK群 / 線形力学系 / カオス |
研究実績の概要 |
1. C*環の分類問題:「Pseudo-solenoids」は位相的シェイプ型が位相型と一致するという著しい性質を持つコンパクト距離空間族である。Pseudo-solenoidを底空間とする有限次元行列環のC*環としての同型類はK1群によって決定されることを証明した。この結果により、AF環(real rank 0)の分類がK0群によってなされるという古典的Eliottの定理の類似をreal rank1のC*環の族に対して証明できた。得られた結果をpseudo solenoidからAF環への連続関数環に拡張することで、AT環の分類理論に貢献することが今後の課題である。 2.C*環のK安定性はシェイプ同値によって保たれることを示した。この結果によりC*環のシェイプ理論を再検討する必要性が明らかになった。 3. 無限斉次樹木の理想境界上に双曲型グラフ同型写像が誘導する位相同型写像と連続な重み関数が定める荷重合成作用素のhypercyclicityおよびそのヴァリエーションについて研究した。Pavoneによる1992年の結果を以下の様に精密にまた一般化した:双曲同型写像の不動点における重みの値が適切な条件を満たせば、境界の自然な測度に関するLp空間上の荷重合成作用素はi) frequently hypercyclicかつii)Devaneyカオス的である。またiii) ヒルベルト立方体上のシフト作用素が自然に埋め込める、特に位相的エントロピーは無限大である。また双曲同型写像の有限族についてiv)吸引的不動点が相異なりかつ重みの値が適切なら、それらの誘導する荷重合成作用素はdisjointly hypercyclicであることを示した。これらの結果によってカオス的性質をもつ新たな荷重合成作用素を組織的に構成し、新たな視点と課題を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
線形作用素の力学系に関しては一定の進展を見ることができた。一方でC*環のシェイプ理論に関する系統的な研究および、力学系から決まるC*環の性質-特に相空間の次元が高い力学系が定めるC*環-を研究するための有効な研究手法を見出すことができていない。この点がやや遅れていると判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は無限次元線形力学系の理論についての研究をさらに進めるため、前年度までに得られた結果をGromov双曲群の境界上の荷重合成作用素に拡張する。同時に有向樹木上の荷重シフト作用素の力学系的な性質によって定まるモジュライ空間の幾何学的な性質を研究する。また一般射影極限上のシフト作用素に付随するクロス積C*環の様々な次数と力学系的不変量、特に平均次元、との関係について精査する。 研究集会出席を再開し、位相幾何学、微分幾何学、関数解析学および力学系理論の研究者と対面による情報交換を進める。これらの情報収集のために経費を当てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ流行のため及び学内運営業務のため、研究集会出席・研究集会派遣などの研究交流・情報収集が充分に行えなかったため。次年度は研究集会出席および派遣、また研究集会組織などの活動を再開し、幅広い分野の研究者との研究交流を行うために経費を使用する。
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