研究課題/領域番号 |
20K03580
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森吉 仁志 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (00239708)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 指数定理 / 非可換幾何 / 葉層多様体 / 微分同相群 / K理論 / 巡回コホモロジー / 等質中心アファイン曲線 |
研究実績の概要 |
本研究は「非可換幾何学の枠組による指数定理の拡張」と「微分同相群の不変量が関与する指数定理の展開」を目標としており,2021年度においては以下の成果を得た: 1)Ginsparg-Wilson 指数と量子ウォークが関与する指数定理(夏目利一との共同研究);2)等質中心アファイン平面曲線のなす空間の研究(黒瀬俊および藤岡敦との共同研究). 1)では,Ginsparg-Wilson 指数が関与する具体例を量子ウォークを用いて構成し,さらに F. Noether が証明した指数定理との関連性を見出した.また F. Noether が導入した作用素の成すC*環を考えると,これは単位円周上の連続関数環の直和に対してのコンパクト作用素全体によるC*環の拡大を定める.この拡大が導くK群の6項完全系列によって,上記の指数が記述されることを確かめた.2)では,等質中心アファイン曲線のなす空間に対する考察をさらに深め,漸近的等質中心アファイン曲線という概念を導入し,ソリトン解との関連性を精査した.漸近的等質中心アファイン曲線を考えると,その回転数が半整数として定まる.一方,散乱理論における Levinson 定理を考えると,シュレディンガー作用素に関する束縛状態の個数が,ある正則関数の対数積分で与えられる.この対数積分と上記回転数との関係について詳細な研究を行い,一定の成果を得た. 1) の成果については(対面での講演は中止となったが),2022年3月に埼玉大学で行われた日本数学会において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,2020年度に続いて2021年度においても研究集会の開催中止や開催規模の縮小が行われたため,予定していた講演や研究連絡を延期せざるを得ず,計画遂行のための科研費使用に関して大きな困難が生じた.2021年度に予定していた海外渡航がすべて中止となり,研究の進展に大きな障害が生じている.現在のところ,国内の研究者と行っている等質中心アファイン平面曲線のなす空間の研究(黒瀬俊および藤岡敦との共同研究)に関しては,オンラインを通じての研究連絡を重ねており,得られた成果について近い将来に発表を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように,新型コロナウイルス感染症拡大の影響により研究の進展が大幅に遅れている.2022年度には,1)量子ウォークが関与する指数定理と Noether 指数定理の関連性の解明とその一般化(夏目利一との共同研究);2)等質中心アファイン平面曲線のなす空間の研究(黒瀬俊および藤岡敦との共同研究);をさらに進展させて,研究を完成水準にまで到達させ,成果報告を行うことを目標とする.夏目利一との共同研究についてはプレプリントを執筆中である.さらに黒瀬俊および藤岡敦との共同研究については,研究連絡を密に行って論文を完成させることを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,研究集会の開催中止や開催規模の縮小が行われたため,旅費使用額が大幅に減少したことである. 特に,予定していた桂林(中国)およびコペンハーゲン(デンマーク)への海外渡航が中止となったことは大きな要因である.2022年度にこの状況が改善されるかどうかは未だ不明であるが,研究集会への参加方法を工夫したり,オンライン等の手段により研究連絡をより密接に行うことで,2022年度分として請求した助成金と合わせて,使用計画の達成を図る.
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