研究課題
3次元多様体の基本群が両側不変順序を許容するかどうかという問題に取り組んだ.研究代表者は,以前に共著論文の中で,3次元多様体の基本群については,両側不変順序を許容しない場合,共役ねじれ元をもつと予想し,さまざまな3次元多様体の族に対して肯定的解決を与えた.この問題設定において,結び目理論の観点から最も重要な対象は,結び目群と絡み目群である.これらは古典的な結果として,左不変順序を常に許容することが知られており,両側不変順序を許容する例,許容しない例がようやく最近になって蓄積されつつある状況である.結び目群の場合,代表的な2橋結び目であるツイスト結び目では,ツイストの方向が正の場合は両側不変順序を許容し,負の場合は許容しない.研究代表者は以前に,負の方向のツイストをもつツイスト結び目について,その結び目群に共役ねじれ元を構成した.その後,双曲的結び目群の中で共役ねじれ元はあらたに発見されていない.今年度の研究では,2成分の双曲絡み目に着目し,その絡み目群が共役ねじれ元をもつ例を無限に構成した.特に,ホワイトヘッド・シスターとよばれる絡み目を含んでいる.双曲絡み目群の中に見つかった最初の共役ねじれ元の例である.同時に,双曲体積が最小であるようなウィークス多様体及びカスプ付き双曲的3次元多様体について,カスプの数が1つの場合と2つの場合に,その基本群に含まれる共役ねじれ元を見つけた.これらの結果は,国際学術雑誌から既に出版されている.また,二重ツイスト結び目に対して,デーン手術の結果得られる3次元多様体の基本群が左不変順序を許容するような手術係数の範囲について,これまでに得られていた議論のギャップを補完し,さらにある場合についてはその範囲を拡張することに成功した.これは国際共著論文として,国際学術雑誌に受理されている.
2: おおむね順調に進展している
2つの論文を発表し,1つは既に出版され,もう1つは受理されて,印刷中である.
2020年度は絡み目群の中に,共役ねじれ元を見つけることに成功したが,本来は双曲結び目群の中で,共役ねじれ元を構成したい.候補は得られているので,2021年度に成果をあげたい.
コロナ禍のため,国内国外全ての出張を実施できなかったことが理由である.関連する学会,研究集会は全てオンライン開催であった.2021年度の後半には出張が可能なることを期待しているが,現時点では不透明と言わざるを得ない.使用計画として,まずは年度後半の出張を予定するが,コンピューターの更新に加えて,オンラインによる研究情報交換に有益なタブレット端末を購入する.また,関連図書の購入を多めに行う.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Journal of Knot Theory and Its Ramifications
巻: 29 ページ: 2050079~2050079
10.1142/S0218216520500790
Canadian Mathematical Bulletin
巻: - ページ: 1~14
10.4153/S0008439520000703