研究課題/領域番号 |
20K03587
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺垣内 政一 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (80236984)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 共役ねじれ元 / L空間結び目 / 形式的半群 |
研究実績の概要 |
3次元多様体の基本群において,非自明な元が共役ねじれ元であるとは,その元の共役をいくつか掛け合わせることで,単位元を生成できるときをいう.特に,結び目群に含まれる共役ねじれ元の探求を行った.まず,任意に高い種数の双曲的結び目であり,その結び目群に共役ねじれ元が含まれるものを構成した.これまでに知られていたものは,種数1の結び目だけであった.この結果は国際学術雑誌に受理され,現在,印刷中である.オンラインでは既に公表されている.次に,任意に高い橋指数を持つ双曲的結び目であり,その結び目群に共役ねじれ元が含まれるものを構成した.上述の論文で構成した結び目がその候補ではあったが,証明には至らなかった.そこで,ねじれトーラス結び目の族の中から,新たに双曲的であり,しかもその結び目群に共役ねじれ元が含まれるものを構成した.この結果は国際学術雑誌に既に受理されている.
結び目群に限らず,閉3次元多様体の基本群に対しても,共役ねじれ元の存在は課題となる.基本群の階数が2より大きい場合のそのような例は知られていなかった.今年度の研究において,任意に高い階数の基本群を持つ双曲的3次元多様体であり,その基本群に共役ねじれ元が含まれるものを構成した.この結果は国際学術雑誌に投稿し,審査段階にある.
デーン手術によって,L空間を生み出すことのできる結び目をL空間結び目とよぶ.そのような結び目に対して,アレキサンダー多項式から形式的半群が定義される.これまで形式的半群が実際に半群になっている双曲的L空間結び目は知られていなかった.そのような結び目を発見し,さらに半群の階数が5である無限系列を構成した.この結果は国際学術雑誌に投稿し,審査段階にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度,受理された論文が3本あり,現在,審査中の論文が2本ある.また,オンラインではあるが,国際会議,セミナーでの研究発表を2回,国内の学会・セミナーでの研究発表を3回実施した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,L空間結び目の形式的半群について考察を行いたい.任意に階数の高い半群をもつものが存在すると予想する.一方で,レンズ空間結び目の場合,その形式的半群は演算に関して閉じていないと予想され,バーギ結び目のほとんどの族に対してその確認を終えている.残された2つの族について確認を行いたい. また,結び目群に含まれる共役ねじれ元について,その位数という概念がある.任意に高い位数を持つ共役ねじれ元の存在は,先行研究のない未知の課題だが,安定交換子長を利用して,位数の評価ができると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,今年度も全ての学会,研究集会がオンライン開催となり,予定していた旅費の使用ができなかった.次年度も感染状況については予断を許さないが,可能な限り,学会等に対面で出席したい.
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