研究実績の概要 |
過去の自身の研究において, 多様体上の極大なトーラス作用の概念を導入し, コンパクトな複素多様体であって極大なトーラス作用を許容するものの完全な分類が得られていた. またトーラス作用で不変な葉層構造, 横断ケーラー構造とモーメント写像を統一的に扱い, 複素多様体にはその複素構造だけから定まる特別な葉層構造 (canonical foliation) があり, それがモーメント写像を持つような横断ケーラー葉層構造の下界であることや, モーメント写像の像は凸多面体であること, すなわちシンプレクティック幾何における Atiyah, Guillemin-Sternberg の convexity theorem の類似が成り立つことを示していた. 極大なトーラス作用つきの複素多様体に canonical foliation を入れたものの横断同値類が, marked fan とよぶ組み合わせ論的対象で記述されることを示していた. またこの対応を用いて, 横断ケーラーな場合にはその basic cohomology が対応する marked fan によって記述されることを示していた.
当該年度では, Roman Krutowski と Taras Panov との共同研究において, 上の結果から横断ケーラーの仮定を取り除くことができることを示した. この結果は2020年10月に査読付き学術雑誌に掲載, 出版された.
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