研究実績の概要 |
過去の自身の研究において, 多様体上の極大なトーラス作用の概念を導入し, コンパクトな複素多様体であって極大なトーラス作用を許容するものの完全な分類 が得られていた. またトーラス作用で不変な葉層構造, 横断ケーラー構造とモーメント写像を統一的に扱い, 複素多様体にはその複素構造だけから定まる特別な葉層構造 (canonical foliation) があり, それがモーメント写像を持つような横断ケーラー葉層構造の下界であることや, モーメント写像の像は凸多面体であること, すなわちシンプレクティック幾何における Atiyah, Guillemin-Sternberg の convexity theorem の類似が成り立つことを示していた. 極大なトーラス 作用つきの複素多様体に canonical foliation を入れたものの横断同値類が, marked fan とよぶ組み合わせ論的対象で記述されることを示していた. またこの 対応を用いて, 横断ケーラーな場合にはその basic cohomology が対応する marked fan によって記述されることを示していた. 昨年度はRoman Krutowski と Taras Panov との共同研究において, 上の結果から横断ケーラーの仮定を取り除くことができることを示した. この結果は2020年10月に査読付き学術雑誌に電子版が掲載, 出版されていたが, 2022年4月に印刷されたものが出版された. また, 糟谷久矢氏との共同研究において, モーメント写像と葉層構造を用いてSU(3)上の左不変でない複素構造の研究を行なった. 得られた成果は論文に纏め, 現在, 登校中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度と同様, 新型コロナウイルス感染拡大によって, 出席, 講演を予定していた国内外の研究集会のほとんどがオンラインとなったために, 旅費にあまりが生じた. その分を次年度に使用したいと考えている.
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