研究実績の概要 |
(1)偶数次元コンパクトリー群には左不変な複素構造が存在することは古くから知られおり, さらに2000年代になって左不変でない複素構造の構成が発見されて いる. 本研究課題では糟谷久矢氏との共同研究で, モーメント写像と葉層構造の手法を利用してSU(3)上の複素構造の研究を継続して行なっている. 昨年度までに得られていた成果を論文に纏め, 学術雑誌に投稿していたが, 査読を受けて一部加筆, 修正を行った. またSU(3)だけでなく, 他のコンパクトリー群についても考察を行なっている.
(2)トーリック多様体の微分同相型の分類問題は, トーリック幾何, トーリックトポロジーにおける懸案となっている. 特にBott多様体と呼ばれるものに対して 「2つのBott多様体の整係数コホモロジー環の間の同型写像は, 微分同相写像から誘導される」かどうかが問われている(Bott多様体の強コホモロジー剛性問 題). Bott多様体は複素射影直線束を繰り返して得られる多様体であり, 6次元以下の場合は強コホモロジー剛性が成立することが知られていた. 4次元以上の Bott多様体はその構成方法から, 自然にHirzebruch曲面束の構造を持つが, 昨年度はBott多様体の構成から自然に得られるHirzebruch曲面束の「強コホモロジー剛性」を示し, さらにその系として8次元のBott多様体の強コホモロジー剛性が成立することを示した. この結果を纏めた論文の電子版が昨年度に出版されていたが, 当該年度に印刷版が出版された.
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