研究課題/領域番号 |
20K03593
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
細野 忍 学習院大学, 理学部, 教授 (60212198)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カラビ・ヤウ多様体 / ミラー対称性 / 周期積分 / 多変数微分方程式 / モジュライ空間 / グロモフ・ウィッテン不変量 |
研究実績の概要 |
研究計画に従って,アーベル曲面をファイバーとして持つカラビ・ヤウ多様体のミラー対称性について研究を行った.特に,アーベル曲面が,(1,8)型と呼ばれる偏極を持つ場合に多様体の族を構成して「正しい」ミラー族を構成することを行った.カラビ・ヤウ多様体をXとすると,Xのオイラー数は零に等しいことからミラー多様体はX自身であると予想されるため,Xの変形族から始めてミラー族の探索を行った.その結果,ミラー族はX自身ではなくてXを自由作用で割った商多様体に取るべきことが判明し,その変形族と変形空間の詳細な記述を与えることを行った.また,周期の満たす微分方程式として,得られた変数空間上の2変数の確定特異点型微分方程式系を書き下し,この微分方程式の解を構成することによって,ミラー対称性に関連して以下の興味深い結果を得ることが出来た.(1) 局所解のモノドロミー性質に着目して,Xにミラー対称と同定出来る「退化点」を見つけてXのグロモフ・ウィッテン不変量を決定した所,その母関数が楕円モジュラ―関数で簡明に表現されることが見つかった.(2) 族の変形空間を大局的に解析したところ,Xに導来同値なカラビ・ヤウ多様体にミラー対称と同定できる「退化点」が見つかった.さらに(1)と同様に,グロモフ・ウィッテン不変量の母関数が楕円モジュラ―関数で表現されることが見つかった.(3) ぞれぞれの退化点で(種数2までの)高次種数のグロモフ・ウィッテン不変量を計算することが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従って,アーベル曲面をファイバー空間に持つカラビ・ヤウ多様体を調べた.ミラー族の変形空間が正確に捉えられるようになり,これによって変形空間を大局的に調べることが可能となった.フーリエ・向井対や高次種数グロモフ・ウィッテン不変量など,今後の本研究計画の基礎となるものである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で,変形空間を大局的に調べることが可能となり,また,随所でモジュラ―形式が観察された.今後,変形空間の大局的な研究,フーリエ・向井対の幾何学や高次種数グロモフ・ウィッテン不変量などと融合させて,理論的な解明を進める. また,昨年度は海外の研究者と直接議論する機会が失われてしまった.研究成果をまとめて国内外に発信しつつ,関連分野の研究者と成果について討論を行うようにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,国内・国外へ出かけて研究成果の発表や情報収集することが全く出来なかった.また,予定していた国外研究者の招聘や国外での研究集会開催も中止となってしまった.次年度に状況が改善した段階の早期に,研究成果の国外研究集会での発表,国外研究者の招聘を行なう計画である.
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