研究課題/領域番号 |
20K03601
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 斉 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (70192771)
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研究分担者 |
樋上 和弘 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (60262151)
藤 博之 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (50391719)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 結び目 / 体積予想 / 色付きJones多項式 / Chern-Simons不変量 / Reidemeister torsion |
研究実績の概要 |
今年度は,8の字結び目の色付きJones多項式の漸近挙動を,色々なパラメータについて考察した.ここでいうパラメーターは,N-次元色付きJones多項式J_N(E;q)の変数 q に exp(ξ/N) を代入するときのξを指す.ただし,Eは8の字結び目である.ξ=2πi のときは,体積予想として知られており,8の字結び目の補空間の完備双曲構造に対応する双曲体積およびReidemeister torsion が現れることがわかっている. 具体的には,ξが実数のとき J_N(E;ξ/N) のN->∞の漸近挙動を考察した.これまでに,ξがarccosh(3/2)以下の場合の漸近挙動はわかっている.つまり,ξ<arccosh(3/2) のとき J_N(E;ξ/N)は1/Δ(E;exp(ξ))に収束する(Δ(E;t) は8の字結び目のAlexander多項式).また,ξ=arccosh(3/2) のときはNについて多項式発散をする. そこで,本研究ではξがarccosh(3/2)より大きいときを考察した.結果として,Nを大きくしたとき,J_N(E;exp(ξ/N))はNについて指数関数的に増大し,その増大の度合いに8の字結び目の補空間のChern-Simons不変量が現れることが分かった.ただし,この不変量は,8の字結び目補空間の基本群からリー群SL(2;C) への表現(ξに対応している)に付随したものである.J_N(E;exp(ξ/N))の漸近展開に,同じ表現に付随したReidemeister torsionも現れることが分かった.これは上記のξ=2πiのときの結果を拡張するものである. この結果は米国テキサス大学ダラス校のA. Tran氏との共同研究であり,すでに論文にまとめられており雑誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は複雑な関数の漸近挙動を調べ,その結果を位相幾何的に説明するものである.また,その関数には複素パラメータが付随しており計算をさらに困難にしている.さらに,漸近挙動の計算は膨大な計算量を必要とするためコンピュータによる実験にも時間がかかる. 本研究では,手で計算したものをコンピュータで確かめ,それに位相幾何的な解釈を加える,ということを繰り返し行ってきた.また,実際に証明を加える場合にはポアソン和公式や鞍点法のような高度な解的手法が必要である.研究代表者はこれらの技法に不慣れなため,習得にも時間がかかった. 以上のような困難にもかかわらず,いくつかの結果を残せたことは,本研究がおおむね順調に進展していることの証左であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き8の字結び目の色付きJones多項式の漸近挙動を,色々なパラメータξについて考察したい.これまで,ξの虚部が0から2πの範囲に限って考察してきたので,今後はそれ以外の場合についても考えるつもりである. 今までの研究により,この場合も,ξに対応した8の字結び目の補空間からリー群SL(2;C)への表現に付随したChern-Simons不変量とReidemeister torsionが得られることが予想される.ただし,Chern-Simons不変量については表現の持ち上げ,つまり,表現の固有値の対数の分枝の指定により値が変わってくるので,注意しなければならないようである. これまでにも増してポアソン和公式や鞍点法といった解析的手法に習熟する必要があると思われる.また,複雑な計算をする必要があるので大学のスーパーコンピュータの利用も視野に入れたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより,予定していた出張などが行えなっかったため.また,2022年度に可能であればこれまでのものを補うように積極的に出張を行ないたい.
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