研究実績の概要 |
今年度の研究では,DG圏でのbraidにおけるReidemeister移動I, II, III, conjugationについての同型を明示的に記述した.ここで,Reidemeister移動IIIがReidemeister移動IIに帰着させることで,不変量の不変性の運用を簡易にする手法をKauffman trickと呼ぶことにすると,今年度の研究によって,DG圏でのKauffman trickが可能になった.このため,Khovanov homologyの場合に,交差交換に対応するコボルディズムから行なっていたVassiliev不変量の圏論化が,sl(n)においてどのように一般化されるかの手がかりが得られたと言える.
また,Vassiliev不変量の圏論化の研究の基礎付けとして,(A)Vassiliev不変量の曲線版であるArnold不変量のq変形の研究,(B)ブーケグラフのVassiliev不変量のGauss diagram formulaの研究,(C)ナノワードの関手の研究を推進したので,ここでは(A)の内容に絞ってもう少し詳しく触れておく.
1990年代のArnold不変量は正則ホモトピー類上での特異点論による平面曲線の分類だけでなく,ホモトピーをも区別(分類)する不変量となっている.このArnold不変量はgenericな場合は3種類(J+, J-, St)からなり,1996年にビロはアーノルド不変量のJ-のq-変形とも見なされる対象を導入している.また,2013年には曲率の積分としてJ+のq-変形が導入された(Lanzat-Polyak, 2013).これらはいずれもパラメーターqの0次項が回転数, 1次項がArnold不変量, n次項が対応する特異点のresolutionに対し有限型である.そこで最後に残っていたStのq-変形を導入し,その積分形を定式化した.
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